『生きる』がイギリスでリメイクされた
1952年の黒澤明監督の名作『生きる』がイギリスでリメイクされた。
脚本がノーベル賞作家のカズオ・イシグロ。
黒澤監督の物語に忠実な面もありつつこれはこれでオリジナルな雰囲気と新たなコンセプトを感じる作品、全体の佇まい、世界観がとてもいい感じに仕上がっている気がする。
カズオ・イシグロがオリジナルへのリスペクトも踏まえて相当丁寧に脚本書いた気がする。カズオ・イシグロは1954年長崎生まれで今はイギリス人だけどなんか興味深い。
オリジナル版で志村喬の市民課課長の役をビル・ナイが演じている。ビル・ナイといえば映画『マイ・ブックショップ』での森の家に引きこもる読書家ですごくいい味だしてた。俳優として数々の受賞がある演技人。志村喬とは全然異なるキャラで、ほとんどのシーンで小声でセリフ喋る。
スラリとしたビル・ナイ、1953年のロンドンという設定で日本人から見るとオシャレな感じもしちゃう。志村喬が歌う「ゴンドラの唄」はスコットランド伝承歌「ナナカマドの歌」になり、市民課で小田切みきが演じた若女性役もそれなりに踏襲されつつ新たなキャラでありキーになる役柄になっている。
日本の1952年は戦後という感じがあるが、ロンドンではそれはあまり感じず音楽も最初に入る流麗なピアノには、これは黒澤版『生きる』にはない!と思った。最後が多少盛り上げちゃうけど、まあ許容範囲かなあ・・
制作へのエピソードが面白い。カズオ・イシグロとプロデューサーのスティーヴン・ウーリーが1930~50年代の白黒映画を次々に言うゲームをしているところにビル・ナイが来て、(ナイが言うにはあの2人は映画オタク)そのうち黒澤明監督の『生きる』をビル・ナイ主演で、、、っていうことになったらしい。ウーリーはイギリスのインディーズ映画シーンでは有名なプロデューサーで『・・ブライアン・ジョーンズ』の映画を監督もしている。