チック・コリアが・・・

カテゴリー: ミュージシャン
投稿者: suoyon

【2021年02月12日】
nowhesings_edit (1)


CHICK COREA

チック・コリアが79で逝ってしまった・・・いやいやいやいやこれはショックだ。
どうしよう、、、とりあえず、とりとめもなく書くしかない・・

1970年代はじめにバンドRETURN TO FOREVERで来日したコリアは
渋谷ヤマハにバンドメンバーでやって来た。アルバムの発売記念の
プロモーションだった、と思う。その時サインをもらって握手してしまった。
サインもらうことにそんな興味ないほうなんだけど。
(アイアート・モレイラ、フローラ・プリム、スタンリー・クラークのサインももらった)
そんなミーハーな思い出もねえ・・・チックさんいないのか。

チックは単にジャズ・ピアニストじゃなくて作編曲家としても半端なく半端なく半端なく凄い。
ジャズ史上でも演奏家作曲編曲家でその両方でこれほどの才能ある人はそういない。
それも抜群に独自性が抜きん出ている。
メロディ、リズム、ハーモニーのどれをとっても自分のこだわるオリジナリティがあり、
理論的にも超優秀。モード手法のことを完全に理解できてる超才人。
優れた演奏家はアレンジャーには行くがチックはメロディ、その歌心があるのも凄い。

昔ハービー・ハンコックとピアノデュオでバルトークPiano曲集『ミクロコスモス』の中の
「OSTINATO」を弾いたライヴを武道館に観に行ったけどリズムキープにグルーヴが
あって気持ちよかった。このグルーヴはジャズやラテンやってないと無理だ。

クラシックピアノを学んだのちにジャズに行ったのだろうけど、
このリズムのグルーヴ感は凄いし、尚且高音でのスタカート的に散りばめるフレーズの
オリジナリティはチックならでは。ハンコックは「なんでも来い」タイプの職人肌で
ポップのバックからファンク、ジャズと、やはりすべてにレベル高いけどチック・コリアは
受け身というより攻める人っていう感じで、すべてに自分の強烈な色がある。
ただ普通のロックやR&B系のテイストはない・・まあなくていいです、ここまで独創性あるし。

キース・ジャレットが陶酔型で40~50分のソロの即興ライヴとかで熱いがチック・コリアは
やればきっとできちゃうだろうけど絶対そういうことはしない、
絶えず客観性があって感情に流されるままの即興はない。
ジョー・ザヴィヌルも作曲家キーボーディストで実はザヴィヌルのほうが好きなんだけど、
ピアノの技術はチックのほうがね、まあそれは持ち味でいいんだけど。
そしてアイデアに溢れている人なので多作。
70年代には1年に4枚アルバム出してすべてオリジナル曲って、
並の創作エネルギーじゃ無理。
アヴァンギャルド時代のARCもあれば
サービス精神のある楽しいアンサンブルもある。
ただそれも手抜きしているわけではなくレベル高い。
写真のアルバム『NOE HE SINGS,NOE HE SOBS』(1968)は27歳で
作曲、演奏していると思うと超超超凄すぎ。
ビル・エバンスの影響から脱してモード・ジャズのピアノトリオの最高傑作だと思う。
ミロスラフ・ヴィトウスのベースも良い。この頃のチックはモードともう一方の流れ
フリージャズや現代音楽の影響もあり『IS』は現代音楽風。

『RETURN TO FORVER』(1972)で保守的なジャズ評論家にコマーシャルに走ったと
言われたがやってることは和声もリズムも凄いし、メロディアスな曲もあって他の追従を許さない。
この表題曲の和声がめちゃ好きで4度や2度の使い方が印象派的な終止感に行かないムードが
めちゃ素敵、アイアート・モレイラのドラムも好き。
確かに直前にやってたアヴァンギャルドのバンドARCが経済的に失敗したので方向変えたのかもしれない。
売れるようなことやってもだいたい売れないのがこの世界。
売れたのは流行に乗ったとかを超えてやはりチックの音楽に魅力あったからだ。
ブラジル系のリズムやスパニッシュテイストも彼のオリジナリティに融合されて
独自の音世界を構築していた。その後はクラシックも取り入れている。
マイルスの『IN A SILENT WAY』『BITCHES BREW』という
僕の最高に好きなアルバムに参加している、というかそこでもチックの和声感が凄い好きなのだ。

ピアノソロ『PIANO IMPROVISATIONS VOL.1&2』は短い即興音楽集で
これがまたアイデアに満ちていて素晴らしい。
Lydian Flat 7th Modeでの作曲を知った時には衝撃的でした。

チックはクラシカルなアプローチもありクラシック系でもチックの曲を
演奏するような時代にもなったけど、やはりリズムのグルーヴがないとダメだと思う。
そしてそのリズムのグルーヴ感は勉強、練習だけでは無理な範疇だからだ。
ジャズ、ラテン、R&Bなどのブラックミュージック・ルーツの音楽が
好きでないと身体性みたいなもんで身につかない気がする。

チック・コリアが逝っちゃったのは残念を超えて、
なんかあの1970年代ころ学んだ僕らの時代の音楽が過去のものに
なっちゃうような気がして(勿論音楽は残っていくんだけど)あまりにも悲しい。
20歳のころアンジャズスクールのアレンジコースで学んでたとき、
仲間とよくチックの独自性について話し合ってたのが懐かしい。
チックの音楽から多くのものを学んだ。
心よりほんとうに心よりご冥福をお祈りします!!!

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