| Next»
カテゴリー: 映画音楽
(2024年02月20日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
1952年の黒澤明監督の名作『生きる』がイギリスでリメイクされた。
脚本がノーベル賞作家のカズオ・イシグロ。
黒澤監督の物語に忠実な面もありつつこれはこれでオリジナルな雰囲気と新たなコンセプトを感じる作品、全体の佇まい、世界観がとてもいい感じに仕上がっている気がする。
カズオ・イシグロがオリジナルへのリスペクトも踏まえて相当丁寧に脚本書いた気がする。カズオ・イシグロは1954年長崎生まれで今はイギリス人だけどなんか興味深い。
オリジナル版で志村喬の市民課課長の役をビル・ナイが演じている。ビル・ナイといえば映画『マイ・ブックショップ』での森の家に引きこもる読書家ですごくいい味だしてた。俳優として数々の受賞がある演技人。志村喬とは全然異なるキャラで、ほとんどのシーンで小声でセリフ喋る。
スラリとしたビル・ナイ、1953年のロンドンという設定で日本人から見るとオシャレな感じもしちゃう。志村喬が歌う「ゴンドラの唄」はスコットランド伝承歌「ナナカマドの歌」になり、市民課で小田切みきが演じた若女性役もそれなりに踏襲されつつ新たなキャラでありキーになる役柄になっている。
日本の1952年は戦後という感じがあるが、ロンドンではそれはあまり感じず音楽も最初に入る流麗なピアノには、これは黒澤版『生きる』にはない!と思った。最後が多少盛り上げちゃうけど、まあ許容範囲かなあ・・
制作へのエピソードが面白い。カズオ・イシグロとプロデューサーのスティーヴン・ウーリーが1930~50年代の白黒映画を次々に言うゲームをしているところにビル・ナイが来て、(ナイが言うにはあの2人は映画オタク)そのうち黒澤明監督の『生きる』をビル・ナイ主演で、、、っていうことになったらしい。ウーリーはイギリスのインディーズ映画シーンでは有名なプロデューサーで『・・ブライアン・ジョーンズ』の映画を監督もしている。
カテゴリー: 映画音楽
(2023年08月31日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
Wayne Shorterドキュメント映画『Zero Gravity』
今年3月に旅立ったウェイン・ショーター先生(ココロの師ね)の
ドキュメント映画『Zero Gravity』を
Amazon Primeで観た。
とてもとても、ほんとうにとても興味深い!
episode1、2,3 と3部あり見ごたえある。
肌の色じゃなくて、その人の行動を見て人を判断しなさい、
という母からは芸術的なインスパイアも受けたのかもしれない。
漫画を描いていた子供時代、美術で受賞し、その後音楽をやり、あっという間に
若手の有望株、それもサックス奏者としてだけでなく
作曲家として新しいジャズを想像していく超凄い人へ・・・
しかしニューヨークの大学の音楽の先生の言葉:音楽の道は3つあると言い、
イマ・スマック(当時活躍していた凄いテクニックの歌手)、
ストラヴィンスキー、チャーリー・パーカーの3つだと言う。
日本じゃありえない!!!考えられない独自の先生!
ウェイン・ショーターのティーンエージャー期はチャーリー・パーカーの
ビバップが隆盛してきた時代。当時一番刺激的で新しい音楽はビバップなわけだ。
ショーターはすぐビバップのイディオムをマスター。
episode後半はダニーロ・ペレスらとのカルテットが凄い。
全く予測できない演奏、演奏形態!ジャズを超越。
死ぬ直前まで現役、それも
絶えずチャレンジする精神性の高い音楽を想像していたことがわかる。
ハービー・ハンコック、ジョニ・ミッチェル、カルロス・サンタナ、
ソニー・ロリンズ、レジー・ワークマンらのコメントもある。
テルコ、アナ・マリア、キャロリーナという結婚、宗教などのプライベートのことも描かれている。
作曲家としては1960年頃から2020年代までショーターワールドが一貫しているし、
サックス奏者としてはイマジネイティヴで、おきまりの吹きまくりアドリブという感じがなく
その場で感じた感覚で間の取り方も凄い。
このドキュメントで改めてその独創性が確認できた。
写真左はアルバム「EMANON」より。
カテゴリー: 映画音楽
(2023年07月20日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
『水で書かれた物語』(吉田喜重監督 1965年)を上田の映劇で観る。
映劇という劇場が昭和の名残りあるレトロな場所なので作品とシンクロしてた!
出演:岡田茉莉子、浅丘ルリ子、入川保則 山形勲 音楽:一柳慧
話は石坂洋次郎原作のメロドラマ。不倫、母子相姦、心中、幼児性愛とかなりインモラル。
温泉入浴シーン、キスシーン、濡れ場等々この時代の日本映画としてはかなりのほうでしょう。
しかし吉田喜重ですから、撮り方が下世話にはならず芸術的というか、
カメラワークや照明もこだわっている。
ツッコメば、って言われればあるけど、でもまあ撮り方、話の進め方は説得力ある。
妄想シーンも変態気味だけど芸術的なのかも。
主演の岡田茉莉子の魅力、若き浅丘ルリ子がピチピチしている。
入川保則はよく子供の頃テレビドラマの2枚目な脇役で見た印象がある。
そして音楽の一柳慧は当時現代音楽作曲家の第一人者であり、
ここでも情緒的なメロディは一切ないコンテンポラリーなスコア。
ほぼ統一感あるモティーフで全体を包んだ。
編成はチェンバロ、ヴァイオリン、ドラムス、パーカッション等で2時間の作品に
20弱くらい短い音楽があてられた。
ただ一般人にはおどろおどろしいという感想が聞かれたので、
僕らのような音楽を生業にしているものと聴こえ方が異なるかも。
この時代のトレンドとも言えるこういった現代調は懐かしくも思うサウンドでもあり、
当時最先端のレベル高き作曲でありながら、その後衰退しちゃう音楽なので
流行の音楽のような響きになってしまったのかもしれない。
この作品は上田市、丸子町など信州でロケしていてもう廃線になった
上田丸子電鉄が出てきたり、当時の上田の町並みが楽しめてめちゃいい。ただ撮影が地方の町ということだけで内容にローカル色は全くない。
当時松竹ヌーベルバーグ(大島渚、篠田正浩など)のひとりと言われた
吉田喜重監督は昨年逝去、岡田茉莉子はこの作品の前1963年頃に吉田監督と結婚、
そして結婚直前に撮った作品が代表作でもある映画『秋津温泉』となる。
カテゴリー: 映画音楽
(2022年10月29日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
配信ドラマ『シコふんじゃった!』が26日からディズニープラスで世界配信!
1991年の映画版『シコふんじゃった。』
から30年経ったという設定での全10話からなるドラマ。
主演の葉山奨之の飄々とした感じ、伊原六花の身体の柔らかさからくる四股の
美しさは撮影現場でナマで見たが見事!プロの力士でもなかなかいない四股(シコ)。
音楽は1991年映画版の雰囲気を踏襲したのが、
ハバネラ風ピアノ曲(写真はその1991版の譜面の主要モティーフ)、
弦楽のキザミ的な曲、弦の軽いコメディタッチの3曲。
あとは
10話からなるドラマなので脚本段階で約30曲を作曲しデモ制作。
それが4月から6月辺り。そして5月頃クランクインし、1話2話とラッシュ映像を
観てどうしても必要なタイミング合わせ等の曲も作曲。
また片島監督はじめ4人の監督の要望のあるシーンの音楽が数曲あり、それらを作曲。
7月に生楽器のレコーディングを行った。
木管(Fl,Cla)、弦楽(6-4-2-2-1)、アコーディオン、鍵盤パーカッション(Marimba,Glocken)、
ラテンパーカッション、ギター(Elec)、ウクレレ、バンドゥリア、ピアノ、ベース、ドラム、
プログラミング、メロディオン、ヴォーカル等。
このレコーディング時点ではまだ2話までしか撮影が終えていないので、
レコーディングは終わったのに、自宅でできる限り可能な対応での作曲の追加やエディットをした。
僕のPCにはバリエーション混ぜると80テイクの曲が並んでいた!
またラッシュ映像が次々と出来てくると音楽チームの
僕とJirafaでシーンのどこにどの音楽を入れるかという作業を行った。
本来作曲家はこの作業はやらない場合が多いが
僕の場合は映画では勿論すべて自分で判断し、その後監督の要望もあるし、その調整で決めて行くスタイル。(1998年からそうしている)
10話のドラマ全部をやるのはすごいすごい大変な作業だったが、
音楽の配置場所を決めるという作業はある意味もっとも大事なので納得した仕事にはなる。
そこでは音楽の編集もありになるので時間がかかる。
またスタッフに「音楽編集」の方もいるのでデモでラッシュに音楽をつけたら本番は
音楽編集者とメールのやり取りで決定版を決めていく。
そのプロセスで音楽編集者(佐藤さん)のアイデアもあったりして助けられてはいる。
ただ10話全部やってプリミックス、MAにもほぼすべて立ち会ったので大泉東映の
MAスタジオには20日間は行ったことになる。
3月末からすべてのMAが終わる9月頭まで休み無く働きました。(その間の講師仕事もあったしね)
また音楽プロデューサーなしで行ったので、これはある意味大変だが映像側とダイレクトな利点もある。
ちゃんとした音楽プロデューサーなら良いがCMのような段取りで
仕事する音楽プロデューサーは絶対良くない。
またいちいちサンプルだのかんだのっていいうのも嫌だ。1曲や2曲の規模じゃないんだから。
また1991年映画版でエンドテーマ曲の「林檎の木の下で」(歌:おおたか静流 編曲:加藤みちあき)が
大好評だったので今回、この曲を劇中でインストやスキャットで使用することになった。
しかしJirafaが試しに英語歌詞で歌ったところから「いいんじゃない!」っていうことになり
エンドテーマ曲にということに出世!?してしまった。
嬉しきハプニング。なのでクレジットが間に合っていない、ということになった。
(編曲はJirafa。最終話でクレジットされます)
1991年版では作曲家の故佐藤勝さん(黒澤映画でもおなじみの巨匠作曲家)に当時の
日経エンタテインメント誌で音楽のお誉めのお言葉をいただいた思い出があるが、
その記事を見つけてくれたのがおおたか静流さん。
今回の最終話のMAの日に加藤みちあきさんから訃報を聞き、呆然となってしまった。
おおたかさんにも今回の作品の報告しなくちゃって思ってたのに・・・
10話の新たな『シコふんじゃった!』が完成した。
写真は1991年版の劇中メイン曲の1節。キーはGだがc#なのでリディアン。
このGlydianとF#が繰り返すパターンが出だし部分。
カテゴリー: 映画音楽
(2022年09月11日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
シコふんじゃった!2022
1991年の周防正行監督の映画『シコふんじゃった。』が
31年経ち配信ドラマ『シコふんじゃった!』になり
再び音楽担当しました。
10話からなる物語。前回からそのまま30年経ったという設定で面白い。
3月末辺りに打ち合わせをして8月まで作曲、
MA(映像と音関係を仕上げる作業)に入ってからもまだ作曲していた。
まとめて作曲をしてレコーディングし、それらの音楽40曲(バリエーションやボツ曲含めると80テイクがPCにあった)
をどう毎話にあてはめるかも自ら提案し、
ほぼすべてのプリミックスとMAに立ち会ったので
3月からほぼ休み無く(他のスケジュールもあるし)働いた。(歳なのに)
監督は映画『カツベン!』で日本アカデミー優秀脚本賞受賞の片島章三を
メインに若手監督3人(後閑広、廣原暁、植木咲楽)が1話ないし2話担当。
主演は葉山奨之、井原六花。ダンサー出身の井原六花の四股は見事です。
清水美砂、竹中直人、柄本明、田口浩正、六平直政も出演。
ディズニープラスで10月26日より配信予定。英語字幕版もあり世界配信。
また1991年映画『シコふんじゃった。』というとおおたか静流が歌った
エンディング曲「林檎の木の下で」が大好評だった。これは一応タイアップなのだが、
当時一緒にバンドやってたおおたかさんがソロを出したタイミングで、
そういう繋がりで決まったし監督も気に入った音楽。編曲が加藤みちあき、
このみちあきさんのアレンジが映画の雰囲気にもバッチリで、
よく『シコふんじゃった。』の音楽よかったです。「林檎の木の・・」って言われたが、
これは私じゃなくてみちあきさんのおかげ、おおたかさんのおかげなんです。
あらためてお二人に感謝です。そのおおたかさんに報告しなくちゃ、
という矢先の彼女の旅立ち、告別式でご報告。
みちあきさんにもお伝えしました。
今回もその「林檎の木の下で」をインストで劇中音楽として使おうということで
demoや映像への仮あてを行っているうちに音楽チームに参加している
Jirafa編曲&歌のバージョンが監督プロデューサーに好評で、なんと今回もテーマになってます。
劇中でもインストとしていろんなバリエーションで使用しています。
写真はハバネラ風の曲にドラムではなく複数のタムをセットして叩いてもらった時のもの。
これは1991年版を踏襲しているが、曲は一応別曲。
カテゴリー: 映画音楽
(2022年04月01日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
映画『ブリキの太鼓』
1979年ドイツのフォルカー・シュレンドルフ監督の映画。
戦後ドイツ文学の代表作の映画化、とのこと。
昔なんとなくみちゃったけど久々にじっくり観た。
音楽がモーリス・ジャールなんですワ!これが。
ここでは心に残るミーハー向けメロディとかなくて、そのドライ感覚が
めちゃいいし、安っぽく通俗的にならない。
ジュースハープ風音色とか、ブリキの太鼓のフレーズが印象的。
冒頭はほぼ太鼓とグロッケンだけだし。
ポーランド、ダンツィヒ(グダニスク)を舞台に1918年から
数十年を、ぶっ飛んだ内容、子供が主役だけどオトナな物語、
戦争、ナチスに翻弄される人々、カシュバイ人、ユダヤ人、小人、
セックスなどの事柄を3歳で成長をとめた男の子を通して描いている、、
ちゅうことなのかな。主人公役は11歳の男の子・・・怪演デス
情緒的な感傷とか涙とかない・・・あと説教臭くないので、
そういうのを好む日本人向きではないのかも。
一時アメリカではポルノ扱いされたこともあったようだが、そんな
感じではない。時代は変わった。
ハリウッドには絶対ないテイスト、それだけでも
とりあえずいいんじゃないの、ってね。
ポーランドはドイツとソ連に挟まれて一時はナチスが台頭し、
町ぐるみでそういったポピュリズムに巻き込まれ
主人公の父親もナチス入党するとか、主人公が入ったサーカス団がパリに
行った頃連合軍が巻き返し、ダンツィヒの町にはソ連軍が押し寄せ
父親はソ連兵に撃ち殺される。
ハリウッド的娯楽映画的な面白さではないけど、これもあり、
昔は多少怖かったけど、今はオモシロイ。
フォルカー・シュレンドルフ監督というと
1967年の映画『Mord und Totschlag』
(英題:A Degree Of Murder)
音楽:ブライアン・ジョーンズ(R.Stonesの)
主演:アニタ・パレンバーグ がソフト化してほしい。
カテゴリー: 映画音楽
(2022年01月09日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
俳優のシドニー・ポワチエが亡くなった。
映画史上最初の主役級スターになった黒人俳優っていうイメージ。
写真は1955年の『暴力教室』で、学生の中心的な役柄。
その相手がヴィック・モローというのも凄い。
モローは僕らの世代だとTVシリーズ
『コンバット』でのサンダース軍曹で人気あった。
『暴力教室』では「Rock Around The Clock」という
ビル・ヘイリー&コメッツの曲でロックンロール
という若者向けの音楽ジャンルができちゃった、という
ロックの歴史という面では記念的な映画。
もうひとつの写真は『ラスト・ピクチャー・ショー』(1971)という映画。
この監督のピーター・ボグダノヴィッチ監督。この方も最近亡くなられた。
ボグダノヴィッチ監督は『ペーパームーン』(1973)が印象的。
いつもレトロなアメリカの時代感が漂う。
『ペーパームーン』ではライアン・オニールとテイタム・オニールの親子共演。
『ラスト・ピクチャー・ショー』は1950年代のアメリカの田舎の雰囲気。
劇中音楽はすべて1950年代のポップ音楽の使用。
『タクシードライバー』の美女シビル・シェパードが女子学生役で
まさかのヌードシーンあり!
カテゴリー: 映画音楽
(2021年12月27日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
『マダムと女房』 (ヴィンテージ映画勝手に感想シリーズ!)
で、日本初のトーキー映画はというと1931年松竹の『マダムと女房』。
『ジャズ・シンガー』に遅れること4年、、、でもでも飛行機での
行き来のない時代、いろんなものは船で日本にやってきて、そこから
あれこれ情報得て開発したり、製作したりなので4年は凄いかも!
それに『ジャズ・シンガー』はサイレントが大半なのにこちらは
完全なトーキー。大阪松竹の土橋兄弟が技術開発した土橋式松竹フォーン
というサウンドトラック方式とのこと。
『マダムと女房』五所平之助監督 主演は渡辺篤、田中絹代
この時代の田中絹代さんいろんな映画で主演してて凄いです。
ただ当初、田中さんは喋りに方言がありトーキーに自信なかったらしい。
しかし最初の主演女優がスキャンダルで途中から撮影に来なくなってしまい
ピンチヒッターで田中絹代登場となったらしい。
内容はコメディタッチの日常性のドラマ。主演の渡辺篤は浅草
オペラ出身のせいかギャグ的なセンスもあり、肩の力抜けた
今に通じる普通の感じがいい。北野武監督が好きな俳優のひとりに
あげているがうなずける。
音楽・・・劇中音楽はないが、隣の家にやってくるジャズバンドが
劇中音楽の役割をしている。ジャズと言っても1931年ですからね。
Trp,Trb,Alto&TenorSax,Banjo,Drums,Xylophoneそして歌という
編成でオリジナル曲「スピード時代」「スピードホイ」が演奏される。
また、冒頭、主人公が「巴里の屋根の下」を口ずさんでいるのもオシャレ!
映画『巴里の屋根の下』は1930年のフランス映画だから取り入れるのめちゃ早!
とにかく日本的な教訓とかお説教系ではなく洋風なセンスで日常を淡々と描いている。
カテゴリー: 映画音楽
(2021年12月15日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
世界初のトーキー映画『ジャズ・シンガー』(1927年)。
活動写真、無声映画の時代から、映画に音がつくようになった長編作品の第1作。
とは言え、70%はサイレント・字幕に音楽をつけたスタイル。
歌、演奏のシーンがトーキーでその前後に少しアドリブ風なセリフ
「Wait a minute,wait aminute.You ain't heard nothin' yet!」が
世界初、映画からセリフが聞こえたシーンになる。
写真はDVDのジャケット。
黒塗りで歌うのは19世紀に流行ったミンストレル・ショーの名残り。
白人が黒人の真似をするのが、この時代でもあったんだ、ということがわかる。
内容はニューヨーク、ユダヤ教司祭の息子が歌手になりたいのだが
厳しい父が許さず、家出をして歌手になるというもの。
最初に10代の主人公が居酒屋ライヴで歌うが1曲めはスローでいい曲、
2曲めはラグタイムのリズムに乗ったもので、ダンスはM.ジャクソンの
ムーンウォークの原型か?!とも思わせる動き。
ジャズといってもニューオリンズでジャズが生まれたのが1900年頃、
1920年代だとまだスウィング・ジャズも出来ていない、ラグタイム風な
リズムに歌っている感じ。今見るとあまりジャズ風には感じない。
全然下品ではないが、夜の居酒屋で歌うような音楽、当時はいかがわしいほうの
部類だったのかもしれない。リズムに乗って譜面に書いたとおりじゃなく、
その歌手のニュアンスで自由に歌う雰囲気が生き生きしていて、それが
ジャズと言われて白人の間にも広まったのだろう。差別の時代が
ずっと続くのに、白人もジャズに熱中したのは映画「コントンクラブ」でも
描かれたいた。
主役のアル・ジョルソンはなんと19世紀末リトアニア生まれのユダヤ人。
そんな移民の方がアメリカを代表するジャズの映画の主人公、
アメリカってすげえ国だ。
大人になり歌手として活躍する主人公が「ブルースカイ」を歌うシーンがあり、
ジョルソンはメロディを自在にフェイクしている。今で言うミュージカル風な歌い方とも言える。
すでにブロードウェイではミュージカルが全盛を迎えていた頃だし。
この「ブルースカイ」はアメリカのスタンダード歌曲の大御所アービング・バーリン
(「ホワイトクリスマス」の作曲が有名)の作曲だが、
この方もロシア(今のベラルーシ)生まれのユダヤ人。
やはりジャズ・スタンダードは黒人のリズム、ユダヤのスケール感覚(西欧ドレミファソラシドを外す自在なムード)
のメロディからできてるといってもいのかも。おおまかですが。
ちなみにジョージ・ガーシュウィンもベニー・グッドマンもユダヤ系ですね。
カテゴリー: 映画音楽
(2021年09月17日)
投稿者:suoyon
投稿者:suoyon
軟禁中に!じゃなくて療養期間中に・・
もうこのさい閉じ込められてるんだから
刑務所モノの映画でも見ようと思って
刑務所モノの最高傑作『ショーシャンクの空に』(1994)
のDVD持って行きました。
『ショーシャンクの空に』は名優モーガン・フリーマンが
『ドライビングMissデイジー』(1989)での演技、あのセリフの言い方最高だなって
フリーマンの演技も観なくっちゃと言う理由もあってあらためてね。
刑務所モノ・・確かに最後の脱獄シーンは鬱憤晴らしで
エンタメ的に気持ちいいですが、
それよりティム・ロビンスとモーガン・フリーマンの二人の会話、その交流に
惹かれた。といってもプチ感動とかナミダ系じゃないのが良いところ。
日本人は泣けるとそれは良いという構図があるみたいだけど、
全然そういうことではないです。
僕は監督、スタッフ、役者さんが一体となって惹きこまれるシーンなんかに、
いい仕事してる!ってナミダでます。悲しいとかのシーンじゃなくてね。
音楽はトーマス・ニューマンでニューマン一族ですね。音楽一家的な。
演技の邪魔しない目立たない音楽も上手いです。特に独創性っていうのではないけど。
モーガン・フリーマンはナレーションでも
アメリカのナレーションやらせたらのベスト1位に
ランクされてましたね。
アカデミー賞7部門ノミネート。
公開直後は当時もっと派手で売れた作品があって興行的には
失敗と言われたけど、だんだん評価高くなり、
その後アメリカ議会国立図書館フィルム登録簿に重要な
芸術的な映画として保存されてるらしいです。
同じフランク・ダラボン監督の『グリーンマイル』も
同じスティーヴン・キング原作の刑務所モノ、でもこっちはファンタジー。
写真は小諸の夜景。
| Next»