BOBBYKEYSSAX 

Sax奏者のBobby Keys(上の写真)が亡くなった。ボビー・キーズといったらなんて言ってもRollingStonesファミリーとして数々のレコーディング、ツアーサポートをこなした重要メンバーと言える。ボビーはミックやキースと同じ70歳、特にキース・リチャーズと仲が良く、キースと同じ誕生日の12月18日を迎える少し手前の12月2日に逝った。

 

1969年のストーンズの『LET IT BLEED』の「Live With me」が最初の出会いの曲だろう。テキサス生まれのボビーは当時デラニー&ボギーに参加していた。ボビーを起用して60年代R&B風のサウンドを狙ったものだったと思う。「Live With me」のサックスでストーンズサウンドが大人っぽいソウルフルなロックを手に入れたと言って良い。

そして1971年の『STICKY FINGERS』のストーンズにとっても超代表曲のひとつ「Brown Sugar」でのサックスソロは伝説的なロックサックスとしての名演になった。僕は当時高校生だったが渋谷の輸入盤レコード店「CISICO」 でこれを聴き「こんなサックス今まで聴いたことないな」という衝撃を感じた。今では当たり前かもしれないが当時は凄かった。

この「Brown Sugar」でのサックスソロはもう曲の一部、主メロディの一部と化していると言っていいだろう。ツアーでもこの曲のこのサックスソロのこのメロディをファンは皆歌えるほどカラダに染み込んでいる。

今年3月のストーンズ東京公演でもこの「Brown Sugar」のボビーのソロを聴いているがそれが最後となってしまったことになる。

 

同じ『STICKY FINGERS』の「Can’t You Hear Me Knocking」では本来前半部分だけだったのが後半のジャム・セッション風のところでボビーが「オレにひとくさり吹かしてくれ」と言い出して、そのソロが良くてああいった構成の、それまでのストーンズにない楽曲として完成したらしい。

 

1972年のロック史上の名作に数えられているストーンズ『EXILE ON MAIN STREET』の「Sweet Virginia」でのボビーのソロが素晴らしい。勿論これもまずストーンズ調カントリーのリラックスした、でいてアーシーな曲自体がコアなファンには絶大な評価をされているがボビーのソロは溶け込むようにブレンドしている。

 

 ボビー・キーズのサックスというのは例えばジャズ側から見たら下手くそかもしれないが、それは技巧指向の狭い見方だと思う。

ボビーのソロを聴いていると、ジャズ系のサックスには必ずあるスケールを吹きまくるような奏法が一度もないことだ。歌うソロ、歌心がないとフレーズを組み立てられないソロ、渋いブルース・ギターやエリック・ゲイルのギターの無駄な音を入れないpenta-tonicだけで押し通すような、でもグルーヴを考えた・・・それがボビーのソロだ。

 

1973年頃にドラッグやアルコールが酷くて(こんなことストーンズ側から言われてもねえ・・・最もミックは仕事はメチャしっかりやる人ではあるので)ストーンズファミリーから外されて、ジャガーはクインシー・ジョーンズに推薦されたアーニー・ワッツをツアーに参加させた。ライヴドキュメント映画『LET’S SPEND THE NIGHT TOGETHER』でアーニー・ワッツのストーンズとのコラボが聴けるが、そしてアーニー・ワッツは上手いし、ジャズ・フュージョンでのキャリアのある実力者だ。しかしなにか違う。ロックって音数じゃないし、複雑なスケールということでもなく、なにかそこにロックの奥深さがあることがわかる。

 ところで、「上手い」っていう言葉は時にキケンだ。うまい人って感性はなにかに任せていて技術が優れているタイプだったりすることが多い。最初に切り開いた人は決して上手くはなくて・・でも感性が良くて、新たな価値観を作っている、みたいなことが歴史的には多い。

 

ボビーと仲の良いキース・リチャーズがミックに内緒でボビー・キーズをストーンズのツアーに戻す。それはキースが段取りを考え、ミックに知らせないでリハにボビーをスタンバイした。そしてそのソロを聴いたミックは「反論する余地がないな」とボビーのストーンズツアーへの復活を認めたという。しかし、ボビーは15年くらいストーンズから干されてた。ストーンズってやっぱりミックさんの仕切り、相当厳しいんですねえ。

ボビー・キーズ!天国でもジャムってるんでしょうね。

 

下の写真はボビーの代表的な名演が聴ける「Brown Sugar」が収録されてるROLLING STOENSのアルバム『STICKY FINGERS』。ちなみにジャケットのアート・ディレクションはアンディ・ウォーホル。あの有名なベロのロゴマークができた伝説的なアルバムだ!

ボビーキーズ