9月18日、満州事変へと発展するきっかけとなった柳条湖事件勃発の日に、「戦争法案」が可決されました。
戦後70年ではなく、新たな始まりを目指して、雑誌たぁくらたぁに連載中の「 石油文明から太陽文明へ」の原稿を発行前にアップします。

8月15日
戦後70年の8月15日、今年も終戦記念日に戦争体験を次世代に伝えようと様々な活動がみられました。一方、日本人の死者310万人の10倍とも言われるアジアの犠牲者の声を聴く機会は少なく、侵略の歴史の風化が危ぶまれます。国際的な常識では、9月2日、日本がミズーリ号でポツダム宣言に調印した日を太平洋戦争終結の日としていますが、日本では、ご先祖様を敬う美風であるお盆を独自に終戦記念日とすることで、家族の無念を思い起こす日となっています。お盆休みという伝統行事に紛れることで、本来なら、軍国主義からの解放を祝うこの日を国民の祝日に定めることもせず、ましてやアジアの犠牲者に寄り添うこともないまま70年が過ぎました。「ポツダム宣言について詳しくは承知していない」と言ってはばからない安倍首相にとって終戦記念日は、靖国神社を参拝し、お国のために戦った英霊に思いを馳せる日として、どうしても8月15日でなくてはならないのです。首相は、70年談話を表明したその夜のNHKテレビで、女性キャスターが、母親たちの徴兵制への懸念について質すと、「近代戦はIT兵器を扱える高度に訓練された少数の精鋭がいれば十分なので、徴兵の必要はありません」と答え、後方支援の枠を超えた、アメリカ並みのハイテク戦争を思わせる、まさに馬脚を現した答弁を行いました。ここでも日本人の被害者は出さないから大丈夫という視点ばかりで、相手国の人々への加害意識は皆無でした。
国家とは何か
アジアの資源と市場獲得を有利に進める手段として、アメリカに追随し続ける姿勢は、朝鮮戦争を機にアメリカの認める範囲内で、豊かさを享受してきた、「懐かしい昭和の記憶」があるからでしょうか。物不足のさなか、世界中が生産力の向上を競い合った高度成長の時代は終わり、今求められるのは、資本主義でも社会主義社会でもない、誰もが語り得ていないもう一つの未来像を示し、足元から実現してゆくことです。私たちが共感する「菜園家族」構想をはじめ、同じテーマに間向かう者たちの共通点は、地方、ローカルに軸足を置く生き方です。そもそも、庶民感覚における「国」は信濃の国のサイズでさえも広すぎて捉えきれません。故郷の自然に生かされ、それらを最大限活用する為の知恵と工夫こそが、お国自慢、風土のもたらす地域の文化です。明治になって近代国家をめざす政府は、そもそもローカルでしか語り得ない概念を無理やり広げ「日本の風土、日本の文化」という実体のない共通項を作り上げて、国家、そして日本人という意識を覚醒させようとしてきたのです。多様であるが故に豊かなローカルの時代を地方から再現してゆく道の行く先に、時代錯誤の国家主義を乗り越える希望を見出したいと思います。

沖縄振興策とプレミアム商品券
 沖縄辺野古の新軍事基地建設に反対する沖縄県民に対し、政府の対応策はと言えば、沖縄振興策という名の札束での懐柔策があるのみです。かつてはその受け皿だった地元の保守派が、いまは機能しません。一方、内地はと言えば、3・11の教訓もよそに、交付金欲しさに、原発の再稼働を自ら求める自治体も現れている有り様です。
統一地方選挙の直前、緊急経済対策の目玉として2014年度の補正予算に盛られた2500億円の「地域消費喚起・生活支援型」交付金は、全国97%の自治体で、また、長野県では77市町村のうち小谷村を除いた76の市町村を通じて、プレミアム商品券としてばらまかれました。他人の名義を借りてまで商品券を買いあさる事例が頻発する中、飯山市では、先着順で、一世帯100万円まで、総額1億7千5百万円分が用意された20%お得なプレミアム商品券が、発売の3時間前には売り切れ、僅か192名が20万円の不労所得を得るために多額の税金が使われ、市民のひんしゅくを買いました。内閣府が掲げる地方創生とは、国民の税金をばらまいて、国民の票を買う、挙句に国民の信任を得たとして、憲法違反の戦争法案を通す事。一升瓶をぶら下げて投票依頼をすれば悪質な選挙違反とされる世の中でこんな暴挙がまかり通っているのです。私は近頃、与野党を問わず政治家が好んで口にする「国民の皆様」なる言葉に違和感を覚えています。内地の人間も沖縄に倣って、目を覚まし、一人一人が目先の金に惑わされない生き方、国民ではなくローカルな市民としての生き方を始めない限り、原発も、戦争も無くなる筈はありません。

地域通貨の可能性
 今、それぞれの市町村は自治体という誇り高い名前を頂きながら、国の交付金を地域にばらまく下請け装置に成り下がり、住民もまた、これに群がっているのが現状です。こうして自治とは裏腹に国家の意思が地域社会の隅々にまで浸透する限り、原発は動き続け、アメリカ並みに戦争を公共事業とする国家へと落ちてゆくのです。1999年にNHKのBS放送で「エンデの遺言・根源からお金を問う」が放送されると、地域通貨への関心が一気に高まりました。しかしその多くは、根源からお金を問うことなしに、商店街などで地域の活性化と称して、お得感のある地域振興券として発行されましたが、大半は雲散霧消しています。そもそも地域が主体であるべき話に国が便乗し、主導したのが、先に述べたプレミアム商品券です。便利な交換手段に過ぎなかった「お金」はグローバリズムの世界で「マネー」へと変貌し、私たちの暮らしを攪乱しています。大企業保護、軍需産業育成のための戦争法案審議の陰で、改正労働者派遣法が成立し、企業はますます雇用における自由度を増すことになりました。こうした市場原理の病魔に対抗する為21世紀の未来社会では、「菜園家族」を担い手に、地域を主体とした、「自然循環型共生社会」を取り戻して、国家に頼らない、「免疫型自律社会」を構築してゆこうというのが、小貫雅男氏の提唱する静かなるレボリュションの骨子です。菜園と共に、「手仕事のスピードで暮らそうよ」をテーマに自らものづくりを進め、豊かな暮らしを目指す小諸のエコビレッジでは、増殖しないお金、正当な交換価値を持つ、地域通貨の必要性を痛感し、シローネ・コインを発行、これを広める活動を行っています。名前の由来は、かつて環境政策を学んだスウェーデンの通貨クローネからの発想です。苦労はご免とばかり黒を白に置き換えて、お互いを良く知ろうねと言う意味も持たせました。表は、小諸から見た浅間山を、コインの裏側には、「自然循環型共生社会」を表し、浅間山麓で共に生きる、ツキノワグマ、ニホンカモシカ、そして太陽、水、更に稲穂をデザインしました。世界が金本位制を手放した時からマネーの暴走が始まったことに鑑みて、シローネは米本位制を取っています。また輪郭には内山節さんのお話から学んだattakai・okaneの文字を刻みました。これからもこのコインが取り持つあったかい地域を目指して活動を続けます。