カテゴリー: ミュージシャン
(2021年08月30日)
投稿者:suoyon
BetweemTheButtons (1)

Charlie Wattsのベストな演奏は
まず1966年「Paint It Black」。
勢い若さ感じるし、タムのフィルイン、16分音符の切れ味も鮮明。
曲のグルーヴが8ビートなんだけど、独自なムード持ってる。
ブライアンのシタールもすでに1966年時点でエスニック無国籍だし。
それとマルチレコーディングじゃない時代のドラムのマイキングの雰囲気も
好きです。
「赤い扉を見たら、黒く塗りたくなった」っていう出だしの歌詞(M.Jagger)も
なんか反抗的でロックな感じ、中学生にはバッチリでした。

1967年の「Let’s Spend The Night Together」「She's A Rainbow」
で16分音符のフィルイン。
スネア、タムをダカダカダカダカっていうの中学生の時好きでした。
「She's A Rainbow」はクラシカルなキレイなピアノで
曲で始まって、ミックの歌がだんだんメロディを
崩していきいつものR&B風な感じが、
中学生の頃はやはりオトナ社会への
反発がいいと思ってるので、メロディがキレイでセンチなのより
そっちに行っちゃったデスワね。

1969年のロックの名曲「Gimme Shelter」での
曲の展開小節での4分音符のフィルイン。
フィルイン、ってドラマーの見せ所だから、カッコいいフィルするとか、
テクに走って当然なんだけど、4分音符で行くなんて!ある意味、
ワビサビの極地!
細かい音符でテクに走るとそれは個人プレイの凄さなんだけど
大きなフィルインは曲になる、っていう法則を30年前発見しました。
大きなフィルは、それはもう曲の一部になっていくんです。
テクニカルなプレイは個人技の凄さ、として残るんです。
チャーリー・ワッツはテクの凄さとかじゃないから、でもこういうところで
曲に貢献してるのです。

1972年の名作「Exile on Main St.」で速いロックンロールに
ブラシ使うのなんかは
ジャズやってたから出たアイデアでしょう。

名曲「You Can't Always Get Whta You Want」(1969)は
ドラム叩いているのは
プロデューサーのジミー・ミラーでドラムとてもいいです。
そしてミラーのアドバイスを受けているうちにワッツはこれはミラーが
叩いたほうがいいと進言したらしいです。ミラーにいろんなことを
学んだとチャーリーは言ってます。
また同世代のドラマーではジンジャー・ベイカーは完璧、
ジョン・ボーナムは見た中で一番凄いドラマーだと言ってます。

天国でも8ビートのグルーヴを!
そして、元々ジャズドラマーで
自分のジャズ・バンドでも活動していたから・・
4ビートのグルーヴも!

写真はBetween The Buttonsのアルバムより
カテゴリー: ミュージシャン
(2021年02月12日)
投稿者:suoyon
nowhesings_edit (1)


CHICK COREA

チック・コリアが79で逝ってしまった・・・いやいやいやいやこれはショックだ。
どうしよう、、、とりあえず、とりとめもなく書くしかない・・

1970年代はじめにバンドRETURN TO FOREVERで来日したコリアは
渋谷ヤマハにバンドメンバーでやって来た。アルバムの発売記念の
プロモーションだった、と思う。その時サインをもらって握手してしまった。
サインもらうことにそんな興味ないほうなんだけど。
(アイアート・モレイラ、フローラ・プリム、スタンリー・クラークのサインももらった)
そんなミーハーな思い出もねえ・・・チックさんいないのか。

チックは単にジャズ・ピアニストじゃなくて作編曲家としても半端なく半端なく半端なく凄い。
ジャズ史上でも演奏家作曲編曲家でその両方でこれほどの才能ある人はそういない。
それも抜群に独自性が抜きん出ている。
メロディ、リズム、ハーモニーのどれをとっても自分のこだわるオリジナリティがあり、
理論的にも超優秀。モード手法のことを完全に理解できてる超才人。
優れた演奏家はアレンジャーには行くがチックはメロディ、その歌心があるのも凄い。

昔ハービー・ハンコックとピアノデュオでバルトークPiano曲集『ミクロコスモス』の中の
「OSTINATO」を弾いたライヴを武道館に観に行ったけどリズムキープにグルーヴが
あって気持ちよかった。このグルーヴはジャズやラテンやってないと無理だ。

クラシックピアノを学んだのちにジャズに行ったのだろうけど、
このリズムのグルーヴ感は凄いし、尚且高音でのスタカート的に散りばめるフレーズの
オリジナリティはチックならでは。ハンコックは「なんでも来い」タイプの職人肌で
ポップのバックからファンク、ジャズと、やはりすべてにレベル高いけどチック・コリアは
受け身というより攻める人っていう感じで、すべてに自分の強烈な色がある。
ただ普通のロックやR&B系のテイストはない・・まあなくていいです、ここまで独創性あるし。

キース・ジャレットが陶酔型で40~50分のソロの即興ライヴとかで熱いがチック・コリアは
やればきっとできちゃうだろうけど絶対そういうことはしない、
絶えず客観性があって感情に流されるままの即興はない。
ジョー・ザヴィヌルも作曲家キーボーディストで実はザヴィヌルのほうが好きなんだけど、
ピアノの技術はチックのほうがね、まあそれは持ち味でいいんだけど。
そしてアイデアに溢れている人なので多作。
70年代には1年に4枚アルバム出してすべてオリジナル曲って、
並の創作エネルギーじゃ無理。
アヴァンギャルド時代のARCもあれば
サービス精神のある楽しいアンサンブルもある。
ただそれも手抜きしているわけではなくレベル高い。
写真のアルバム『NOE HE SINGS,NOE HE SOBS』(1968)は27歳で
作曲、演奏していると思うと超超超凄すぎ。
ビル・エバンスの影響から脱してモード・ジャズのピアノトリオの最高傑作だと思う。
ミロスラフ・ヴィトウスのベースも良い。この頃のチックはモードともう一方の流れ
フリージャズや現代音楽の影響もあり『IS』は現代音楽風。

『RETURN TO FORVER』(1972)で保守的なジャズ評論家にコマーシャルに走ったと
言われたがやってることは和声もリズムも凄いし、メロディアスな曲もあって他の追従を許さない。
この表題曲の和声がめちゃ好きで4度や2度の使い方が印象派的な終止感に行かないムードが
めちゃ素敵、アイアート・モレイラのドラムも好き。
確かに直前にやってたアヴァンギャルドのバンドARCが経済的に失敗したので方向変えたのかもしれない。
売れるようなことやってもだいたい売れないのがこの世界。
売れたのは流行に乗ったとかを超えてやはりチックの音楽に魅力あったからだ。
ブラジル系のリズムやスパニッシュテイストも彼のオリジナリティに融合されて
独自の音世界を構築していた。その後はクラシックも取り入れている。
マイルスの『IN A SILENT WAY』『BITCHES BREW』という
僕の最高に好きなアルバムに参加している、というかそこでもチックの和声感が凄い好きなのだ。

ピアノソロ『PIANO IMPROVISATIONS VOL.1&2』は短い即興音楽集で
これがまたアイデアに満ちていて素晴らしい。
Lydian Flat 7th Modeでの作曲を知った時には衝撃的でした。

チックはクラシカルなアプローチもありクラシック系でもチックの曲を
演奏するような時代にもなったけど、やはりリズムのグルーヴがないとダメだと思う。
そしてそのリズムのグルーヴ感は勉強、練習だけでは無理な範疇だからだ。
ジャズ、ラテン、R&Bなどのブラックミュージック・ルーツの音楽が
好きでないと身体性みたいなもんで身につかない気がする。

チック・コリアが逝っちゃったのは残念を超えて、
なんかあの1970年代ころ学んだ僕らの時代の音楽が過去のものに
なっちゃうような気がして(勿論音楽は残っていくんだけど)あまりにも悲しい。
20歳のころアンジャズスクールのアレンジコースで学んでたとき、
仲間とよくチックの独自性について話し合ってたのが懐かしい。
チックの音楽から多くのものを学んだ。
心よりほんとうに心よりご冥福をお祈りします!!!
カテゴリー: ミュージシャン
(2021年01月09日)
投稿者:suoyon
南正人


シンガーソングライター南正人さんが亡くなった。
1990年頃だと思うけど環境問題の慈善ライヴに僕が参加していた
バンドVOICE FROM ASIAで数曲南さんのバックを務めた。
フォーク、ロック、レゲエとかの70年代初頭の雰囲気の音楽。
リハスタである曲の譜面にタイトルが書いてなかったので
ガッチリした風情の南さんに聞くと「ありんこ!」って、
そのギャップが面白かった。優しい人柄だったと思う。
まだ76歳なので今やその歳での死は
早いのでとても残念だが、
ライヴ中に倒れて亡くなったので、歌手が舞台で逝った、
っていうことでしょうか。悲しいが本望かもしれない。
天国で続きを歌って下さい!歌ってるね!
カテゴリー: ミュージシャン
(2020年08月02日)
投稿者:suoyon
ピーター・グリーン73歳で逝去。

Peter Greenは僕が中学から高校時代によく聴いたジョン・メイオールや
グリーンが作ったバンド、フリートウッドマックで活躍したギタリスト。

イギリスでのブルースの開拓者ジョン・メイオールのブルースブレイカーズでは
エリック・クラプトンの後釜として19歳で加入、グリーンの後がミック・テイラー
というイギリス屈指のブルースギタリスト列伝になる。もう一方でヤードバーズ系では
エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジとなっていてその両方に
クラプトンがいる。ちなみに末期ヤードバーズがバンド名をレッド・ツェッペリンにする。

ピーター・グリーンがメイオール時代に演奏したブルース曲のアドリブを
耳コピしたのが僕のはじめての耳コピかもしれない。
グリーンの奏法はクラプトンほどのレガート感ではないが白人らしいまとまった
センス良いブルーススタイルでスライドもマスターしている。

フリートウッド・マック時代のアルバム『English Rose』はジャケットが超目立つものだったが、
内容はイギリス人のブルース解釈の延長みたいな感じ。特に「Black Magic Woman」という
グリーン作のブルースが超かっこいいが、その後サンタナがこれをわかりやすいちょい泣ける
ラテンブルース風にして世界的大ヒットになった。僕も10代の頃やってた。
今聴くとグリーンのは渋くて大人っぽい。しかしこの頃のグリーン、クラプトンやミック・テイラーなど
10代後半で、まだまだ一般的でなかったアメリカの黒人音楽のブルースというスタイルを
完全にマスターしているところが驚きだし、凄い。

ミック・ジャガーもシカゴチェス(インディレーベル)のマディ・ウォーターズの
アルバムをアメリカから通信販売で取り寄せてるマニアックな渋い少年だったと言える。

何が当時のイギリスの一部の若者をブルースというマイナージャンルに走らせたのか?
そしてそれがロックという大きなムーブメントに発展したのか、興味深い!
また60年代後半にはイギリスは一気にロック超えをして
ジョン・マクラフリンなど超ジャンルなギタリストを生み出しているのも面白い。

ピーター・グリーン、1970年代にはフリートウッド・マックを脱退、
バンドはブルースからソフト・ロック路線に変わり超売れた。
グリーンはドラッグでほぼ引退状態が長く続き1990年代に復活。
1998年のアルバム『The Robert Johnson Songbook』は基本的に
アコースティック系なサウンドでどこまでも渋い。
ジャムセッションではなくきちんとアレンジしたサウンドだし、ピアノの雰囲気もわかりやすくて良い。
言うまでもない1930年代のブルースカリスマ、ロバート・ジョンソンの作品をリメイクした。

これは聴きやすいし、いきなりロバジョン、マディ・ウォーターズ、ジョン・リー・フッカー、
ライトニン・ホプキンスなどホンマモンの黒人ブルースじゃ濃すぎる方々にはオススメのブルースアルバム。
フリーやバッドカンパニーで活躍したポール・ロジャースが「Sweet Home Chicago」を歌っているのも嬉しい。
ストーンズで有名な「Love In Vain Blues」「Stop Breakin' Down Blues」も新たな解釈している。
凄いギター・ソロとかはなくて・・・
若い頃一世風靡し、ドラッグで隠遁し、復活した枯れた白人ブルースマンっていう趣がなんか人生を感じちゃう。

マーチン・スコセッシ製作総指揮の7本組作品『BLUES』にもあるようにBLUESの聖地は
ブルースが誕生した19世紀末アメリカのテキサス東部からミシシッピ州にかけての当時の
綿花畑地帯のプランテーション、その後ニューオリンズでピアノ中心にジャズ誕生への橋渡し、
第一次大戦後労働力が流入したエレクトリックブルースの発祥地シカゴ、
そして勿論アフリカに根本的源はあるとして、もうひとつが1950年代末から1960年代の
イギリスロンドン。なぜかアメリカで一時廃れてしまったブルースを蘇らせたのが
ロンドンやその周辺辺りの若者達、それがジョン・メイオール、エリック・バートン、
エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ブライアン・ジョーンズ、ミック・ジャガー、
キース・リチャーズ、ピーター・グリーン、スティーヴ・ウィンウッドたちで1950年代に
イギリスで流行ってたスキッフルに背を向け若いのに渋い黒人ブルースに共鳴した、
というのがなぜか興味深い。ちなみにポール・マッカートニーはスウィングとかスキッフルが
根本にあるのでロックンロールあってもブルース色ない。

ジョン・レノンはチャック・ベリーが師匠だからロックンロールだけど、
マディ・ウォーターズとかそういう色はない。ブルースはリヴァプールまで届いてなかったのか!?
クラプトン、ピーター・グリーン、ジャガー&リチャーズはロンドン辺りの出身。

僕の世代はそういったイギリスのブルースに影響うけたのと、
アメリカのホワイトブルースの人たち、マイク・ブルームフィールド、アル・クーパー、
ポール・バタフィールドを聴いた。
ブルームフィールド&クーパーは60年代中期のディランのバックでも聴ける。

ピーター・グリーン(誕生日が一緒だ!)
さんにご冥福を祈るばかりです。
カテゴリー: ミュージシャン
(2020年05月13日)
投稿者:suoyon
浅野孝已


ギタリストの浅野孝已さんが逝ってしまった。

ゴダイゴ再結成の前の1980年代に僕はタケカワユキヒデさんの
CM曲を編曲してタケカワさんに気に入っていただき、
浅野孝已さんとも知り合った。その頃は
よくタケカワさん宅、浅野さん宅にもお邪魔した。

タケカワさんが「ある1曲をその3人3様に個々にアレンジしてみない?」
なんて言って3人でアレンジごっこしたりしたのは楽しき思い出。
当時80年代半ば、2人はすでにPCでの打ち込みをやっていた。
僕はドラムマシーンにあとは手弾きで制作。
「そのうち周防も打ち込みやるんだよ」なんて言われた、、やった。
その後僕はタケカワさんのソロアルバムにも編曲参加した。

また浅野さんはいち早くギターシンセを使用したり先駆的な部分も
あった。僕のスタジオワークにギターで参加してもらったりもした。
2歳上だし、当時すでにスターだった浅野さんタケカワさんは
兄貴のようにペーペーの僕に優しく交流してくれてた。
大阪スクールオブミュージックでもお会いした。

その遥か昔、1969年頃の日比谷野音での
「10円コンサート」
(内田裕也が主催し、まだマイナーだったロックを広める活動としてのライヴ)
に一番カッコいいブルージイなバンド「M」というのが出演したが、
浅野さんはそのバンドのギタリストだった。当時彼も18歳くらい。
日本のロック創世記から活躍していた。
ほんとうにお世話になり有意義な時間をありがとうございました。
トシも近いのにショックです。
ご冥福を、ただただ祈るばかりです。
カテゴリー: ミュージシャン
(2020年02月10日)
投稿者:suoyon
muratajaneiro

写真はコンポーザー、トロンボーン奏者、プロデューサーの村田陽一さんとのお昼のひととき。
尽きない音楽談話の時間でした。
村田さんはSolid Brassや自身のオーケストラ、ジャズ、ボサノバ、ポップとジャンルを超えて活躍するカリスマミュージシャン。
椎名林檎のブラス編曲や桑田佳祐のブラス編曲、紅白歌合戦にも幾つかのシンガーのサポートで超忙しく活躍されている。
自身のビッグバンドでは往年のジャズ名曲からジャコパスの曲と広いレパートリーでジャズへの多大なる愛を感じる音楽を作っている。また渡辺貞夫バンドでも音楽監督を務めた。

最近の僕が担当した映画「カツベン!」では演奏以外に俳優さんのトロンボーン、トランペット指導も頼んで、
茨城や千葉の早朝ロケ現場まで行っていただいた。感謝デス!
NHK「ひとモノガタリ」「にほんごであそぼ」でも吹いてもらっている。

写真のアルバムは、村田さんがブラジルのイヴァン・リンスと作ったアルバム「Janeiro」。
肩の力の抜けた大人のボサ、ジャズなアルバム。トロンボーンセクションが柔らかく包むカウンターなどなるほど!と。
ウィル・リーや椎名林檎、金原千恵子らも参加している。
カテゴリー: ミュージシャン
(2019年01月29日)
投稿者:suoyon
EMANON
エマノンWS



「EMANON」WAYNE SHORTER

最も尊敬するコンポーザーでサックス奏者のウェイン・ショーターは今年86歳になるが昨年発表されたアルバム「EMANON」は超弩級!!の3枚組だ。80過ぎとは思えない、凄い。渋く枯れた味なんて全く無い、チャレンジに満ちたアートな音楽。CDはグラフィック・ノベルと音楽のコラボにもなっている。
音楽はショーター(sax)のカルテットにオルフェウス室内管弦楽団との合奏によるショーターワールド。管弦楽のフレーズにもショーターならではのメロディや高度な和声がふんだんに聴ける。オケ編曲はいわゆる職人的な安全な書きではないアグレッシヴ。これはミーハー向けには無理。普通の4ビートの酒飲み気分でBGMにするようなジャズではない。勿論これで酒飲んでもよい!とにかくショーターのアートの集大成か?!これをやらせたブルーノートレーベルのドン・ウォズ(ベーシストでブルーノート社長)もたいしたもんだ。
ショーターはアート・ブレイキーのあと1960年代はじめにマイルスのバンドに入ったけど、その時からすでにオリジナリティある作風を持っていて、その後もずっとそのこだわりの音センスを追及している。ちなみにEMANONってNO NAMEを逆から読んだもの。
カテゴリー: ミュージシャン
(2018年12月17日)
投稿者:suoyon
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BEGGARDS BANQUET   THE ROLLING STONES 1968

ローリングストーンズ最大傑作のひとつ「BEGGARDS BANQUET 」から50年かあ~感慨深い。
このレコードの輸入盤発売日に、中学生の僕は渋谷ヤマハに行き買った思い出がある。日本盤より輸入盤のほうが先行して発売する時代だった。

1968年当時このトイレのジャケットは下品だとしてレコード会社が判断して、ストーンズ側とトラブルになり、結局別のジャケットでリリースされたが数年後にこのオリジナルジャケットになったいわくつきのアルバム。今回50周年記念アルバムでは両方のジャケットがついているし、「Jumping Jack Flash」のシングル盤ジャケットも付いている!

音楽的にはサイケデリックの時代にさよならして、ジミー・ミラーをプロデューサーに迎えたストーンズは原点であるブルースやロック、R&B、カントリーというアメリカ内のエスニックのようなルーツにたどり着いてこのアルバムを制作した。ミックもキースも24~25歳の時だ。ブライアン・ジョーンズもスライド・ギターで参加していてほぼ死ぬ直前なので事実上の彼の遺作かもしれない。イージーな明るいヒットナンバーがない濃いロックのアルバムであり、ロック史上の名作と言える。レコーディングはストーンズのロンドンの拠点、オリンピック・スタジオ。
このBEGGARDS BANQUET , LET IT BLEED, EXILE ON MAIN STREETが3大傑作。

01 Sympathy For The Devil これはミックが作った曲。トニックから長2度下がる進行はロック音楽にとってダイアトニックに等しいほどスムースな流れ。ベースはキースが弾いていてこのベースラインが普通のラテンになっていないので独特のロック曲になった。スタジオミュージシャンのうまいベーシストだったら逆に普通のラテンパターンにいっちゃうかもしれない。ストーンズの最高傑作。伴奏陣にギターは使用していない。間奏のギターソロはキースにしては珍しい奏法。今では当たり前かもしれないけど、こういうしゃべり口調で叩き込むミックの唱法は独壇場だ。ニッキー・ホプキンスのピアノも途中からファンキーな伴奏で白玉ではなく絶えずフレーズしている。ちなみにニッキーは1990年代に3本の日本映画の音楽担当。
戻って、この歌詞はミックがロシアの小説からインスパイアされた言葉やケネディ暗殺とかを入れて、単なるポップの歌詞でないところも先駆的、甘いロマンティックや青春とは異なるロックという新しいジャンルを当時感じた。ジャンリュックゴダールのドキュメント映画「ワンプラスワン」のこの曲のレコーディング風景、アレンジの過程が克明に記録されている。

02 No Expectations これはストーンズならではアンビエントなカントリーかも。根底にはブルースがある。キースのアコギはギブソンのハミングバード。ブライアンのスライド。シンプルなだけに深みを感じる。しかしミック25歳でこういうの作曲か。
ニッキー・ホプキンスのピアノはフロイドクレイマー風のカントリー。ファンの間では評価高い曲。中学生だった僕は当時すぐにこの曲の良さが理解できなかった(アクティヴなリズム曲じゃないので)がだんだんジワジワ好きになった。ブライアンの最後の良い演奏~彼の遺作的な曲かも。

03 Dear Doctor これもストーンズならではカントリー。アコギとブルース・ハープがめちゃ雰囲気を作っている。けっこうメロディアスでわかりやすい曲、ハモリもただのキレイキレイじゃなくて好き。こういうテイストもうまいことこなしちゃってる。ブルース・ハープはブライアンか、実はミックかも。本物の南部フィーリングとは別なんだろうけどなんか良い。

04 Parachute Woman 性描写が凄い歌詞だけど当時の僕=中学生には理解できなかった。その後対訳見てすげえ~こと歌ってる!ってコーフン。アコギから始まるけどエレクトリックなムード。この歪み感は独自のエフェクト、そしてこのフィーリングはストーンズサウンド。1コーラスの最後にドミナントに行かないのが当時のアメリカの白人のブルースと異なっていた。スライドもテクニックが凄いというフレーズではなく曲の一部になるプレイをしている。テクニックが凄いと曲の良さよりソロの良さになるけど、こういうフレーズで貢献すると曲の良さになる。そこに深いなにかがある気がする。

05 Jig-Saw Puzzle ベースが後で歌と一緒に入ってくるのが面白い。そうするとアコギが一時消える。なんか不思議な曲とも言える。当時ボブ・ディラン的な歌い方の影響って言われてたけど、今聴くとやっぱミックだ。1968年ころ日本でピアノの音楽っていったらクラシックとジャズしか知らなかったがこういうニッキーのファンキーで絶えずリズミックに動いているのは知りえなかった。この頃のストーンズのピアノは必ずニッキー・ホプキンスだ。 リフレインしているうちに盛り上がる、というリズム音楽、身体性の自然な流れ。

06 Street Fighting Man 「Jumping Jack Flash」についでシングル・カットされた。同時期のレコーディング。「王宮に革命を」と言いつつ「しがないオレはロックンロール・バンドで歌うだけ」という一節がミックの正直な心情かもしれない。当時はベトナム反戦やデモの時代で平和運動が真っ盛りだった。レノンはそのまま真っすぐにラヴ&ピース運動に行った。この曲もギターの歪感が独特でアコギをカセットに録ってそれをオーバーロードさせて再生してコンプ風だったりエレキ風な音質を作ったと言われてる。今のような機材がない時代、いろんないい意味チープなアイデアで独自のサウンドを作った。ドラムが普通に2拍4拍のスネアじゃなくて面白い。デイヴ・メイスンも参加している。キースやミックの作曲ってsus4のロックだ。この曲もsus4 の使い方が多く、その後のロックギターのsus4サウンドの先駆的な役割をしている。

07 Prodigal Son イントロから渋いアコギのフレーズ。当時のアメリカ人もできないようなルーツ的なブルース。原曲はロバート・ウィルキンスの戦前の作品。こんな題材を若きミックとキースは取り入れるいうことは相当黒人音楽を聴きこんでいるのだろう。ポップのヒット・チャートとは無関係な彼らのやりたい音楽を通している。

08 Stray Cat Blues ダイアトニックでないコード進行に音符でない歌い方で成立している。ライヴversionだと変にメロディになっていてミックも実はレコーディングの時の集中力でこういうメロディ、歌になったのではないか。コーダ部のソロではないキースのギターのムードが凄い。ソロで聴かせるというのでない分だけ曲の印象を高めている。左右2本ともキースのギター。コーダ部分がコンガなどでまた独自の世界観になっている。キースのソロとも言えないソロが全体へのブレンド感に徹している。

09 Factory Girl このカントリーアイリッシュ風なルーツミュージックも普通のポップな人では書けない濃いムードに満ちている。このアルバムはエレクトリック曲とアコースティック曲のメリハリが効いている。当時ブルーグラス的フィドルなんて知らなかったし、中学生にはきつかったが2年後には大好きになっていた。マンドリンやフィドルはある意味アイリッシュみたいな感じもある。パーカッションもエスニック。工場のおねえちゃんと待ち合わせ、大根足の工場の女、なんていう歌詞、当時の日本ポップから言ったら考えも及ばない世界。1968年当時こんな音楽は衝撃だった。

10 Salt Of The Earth 聖書の一節を題材にした歌詞。最初のワンフレーズはキースがメインで歌っている面白い構成。その理由も不明な緩い時代だった。たぶんキースが作った曲。スケール感のある曲で僕もギター弾きつつ歌う練習をした思い出がある。R&Bシーンで活躍する黒人女性合唱も説得力あって当時の日本のポップ・ロックでは考えられない凄さを感じた。ゴスペル風。コードはまたまたSus4も多用。2beatになるのも面白い。もしかしたらドラムはプロデューサーのジミー・ミラーが叩いていると思われる。この編曲の感じが次アルバムの「You Can’t Get Always What You Want」に繋がる。1989年ガンズ&ローゼスがストーンズのライヴにゲストした時にこの曲を一緒にプレイしたエピソードが有名。
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(2018年09月19日)
投稿者:suoyon
夢の窓辺に


クラウス・オガーマン 突然ですが、コンポーザーのClaus OgermanのCDを買い直してしまった。というのは1977年にアナログで持ってたからだ。今年5月頃エンジニアの吉田俊之さんと話してたら、そんな流れが・・アナログのほうが音はいいんだけどね・・・
写真はそのアルバム「夢の窓辺に(Gate Of Dreams)」。まさしく夢のような弦楽の大きなスケール感のさりげなく不思議さが漂う世界。アドリブ奏者もブレッカー、サンボーン、ベンソンなど達者なプレイヤーが揃ってる。
オガーマンはポーランド生まれの作編曲家。ジョビンやジョアン・ジルベルト(「Amorosso」は名作)のボサノバのアレンジ、ジョージ・ベンソンのヒット曲「マスカレード」の弦のアレンジなど、弦楽編曲では独自の音の響きを追及した。ジャズ的なテンションの不思議な響きはこの上なく気持ちいい。マイケル・ブレッカーとの共同アルバム「Cityscape」もブレッカーのアドリブの凄さもあるけど、ここでのオガーマンの弦もメチャ気持ち良い。ジャズ歌手ダイアナ・クラールの編曲ではライヴで指揮で登場するのがyou tubeで見られる。数年前に亡くなってるのでその姿が見れるのは貴重だ。
この「S’Wondrful」はジョアン・ジルベルトの時のアレンジだ。
こちら
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(2018年09月02日)
投稿者:suoyon
アレサ・フランクリン




アレサ・フランクリン〜逝ってしまった。単にソウルの女王とかを超えてアメリカポップ音楽の最高に偉大なシンガー。その底なしのパワーとか表現力は凄い。実音で相当高い音域出るしそれがスムースでパワフルでニュアンスあり、スローでもテンポありでもOK、もう誰も追いつけない。後のソウルシンガーの礎を築いた。写真は大ヒット曲は入っていない「RARE & UNRELEASED REC・・」というその名の通りのレアものの2枚組アルバム。1960年代のアレサのピアノ弾き語り的な曲もあったり、ゴスペル的なものもある。単にヒットメロだけでなくアレサの歌の真髄に迫るにはここまで聴いても良い。
ヒット曲のほうでは「Natural Woman」(キャロル・キング作)という曲が凄い好きで、あのスローなハチロクのリズムにリフ的なメロディで「you make me feel」とリフレインして盛り上がってタイトルを歌い込む流れはぐっと来る。そうそう、数年前にこの曲を神近まりさんが歌いJirafaがコーラスしたけどこの神近さんのソウル魂にもぐっと来たし、その選曲にも感激でした。
アレサは1986年にウーピーゴールドバーグ主演の『Jumping Jack Flash』という映画の主題歌を歌っているが、その主題歌「Jumping Jack Flash」は作曲者のキース・リチャーズプロデュースで彼のギター、ドラムはスティーヴ・ジョーダンで、この曲のメロディの崩し方の凄さはまさしくソウルの真髄!譜面じゃないよ音楽は!っていう見本的なヴォーカルだ。ソウル、ゴスペル、ロックと繋がるブラック・ミュージックから歴史の体現かもしれない。こちら