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カテゴリー: 映画音楽
(2020年09月12日)
投稿者:suoyon
秋刀魚の味 (1)



映画のワンシーンにこだわる!!(勝手なシリーズ)

先日蓼科の「無藝荘」のことを取り上げたが昨日NHKで小津安二郎ドキュメント
やってて「無藝荘」が出てきた。なんという偶然!
また戦後、小津作品は家族を描いたドラマに徹した理由なども描かれ良かったです。
いつも同じような題材でオリジナリティを否定するような・・オリジナリティを超えた
ような哲学的な境地に立った感じで作品を作り続けた小津監督。

そこに至ったのは本人自身の戦争体験だったようだ。
小津は1937年に始まった日中戦争に招集され仲間が死んだり殺される現場を
目の当たりするという悲惨な体験をしている。
しかし戦争を題材にすることはなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『太陽の子』は戦争中の若き研究者を描いたものだったが・・・戦争映画ではないが
『秋刀魚の味』(監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 1962年松竹)の
バーのシーンのやりとりが軽妙ながらとても好きなシーンだ。
このシーンに小津が戦争を描かなかった理由が凝縮してウィットに富んだ
軽妙なシーンで戦争を批判しているかもしれない。
笠智衆と加東大介のやり取りのシーン。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

時代は戦後の1960年代はじめ。
戦時中海軍の駆逐艦の艦長だった平山(笠智衆)は部下だった坂本(加東大介)に
偶然会う、そして坂本行きつけのトリスバーでウィスキーを飲んでいる。

坂本「けど艦長、これでもし日本が勝ってたらどうなってますかねえ」
平山「さあねえ」(中略)
坂本「勝ってたら艦長、今頃(中略)ニューヨーク、パチンコ屋じゃありませんよ、
ほんとのニューヨーク、アメリカの」
平山「そうかねえ」(中略)
坂本「負けたから今の若い奴ら向こうのまねしやがってレコードかけて
ケツ振って踊ってやすがねえ」
「これが勝っててごらんなさい、勝ってて・・・
目玉の青い奴らが丸まげかなんか結っちゃってチューインガム噛み噛み三味線弾いてやすよ~」
「ざまあみろってんだい!」

平山「けど負けてよかったんじゃないか?」

坂本「そうですかねえ、、、うむむ、、」
「・・・・そうかもしれねえなあ」
「バカな野郎がいばらなくなっただけでもね」
「艦長、あんたのこっちゃありませんよ、あんたは別だ」
(中略)
そこへバーのマダム(岸田今日子)が銭湯から帰ってくる。

坂本「今時分フロ行くやつあるかい!」
「今日はお客が少なかったからよ」と、
ちょっと色っぽいマダムに平山は亡き妻の面影を感じて魅入ってしまう・・・・
そして「軍艦マーチ」が流れる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

きっと戦争に行った者にはノスタルジーな音楽であり、
威勢のいいマーチが逆に平山には悲しいとも言えるムードを醸し出す。
音楽の役割って面白い。
威勢のいいマーチが心情的に悲しく響くっていうことだ。
この曲はエンディングでも劇伴アレンジされ(音楽:斎藤高順)、
娘を嫁に出した父の寂しさをフォローする役割を果たしている。

ここで戦争を個人のレベルでの思い、思想とかイデオロギーとかじゃなくて、
一庶民の感じたカタチでさりげなく日本の戦争を批判しているかもしれない。

笠智衆の存在感、加東大介というオンリーワンな個性派な脇役が、
江戸っ子調の言い回しがめちゃリズムがよく、いい味出している。
銭湯に行ってたバーのマダム、なんていう設定も昭和の当時ならでは。
洗面器抱えて岸田今日子が妙に色っぽい。

カメラワークは切り返し中心にフィックス。パンや移動、ズームアップなどの動きは一切ない。
切り返しが多いということは実際に会話していなかったりするので、
俳優は繋がりの良い演技を求められる。
照明セットの変えもあり時間かかる撮り方。
そして一見普通の会話ながら感情が抑制されたセリフで構成されている。
熱演みたいにならないので普通っぽく思われるが実は演技が上手くないと繋がらないと思う。
長回しはないし。(そっち_撮影演出_の専門ではないので、たぶんちょっと違うんだよなあ、でしょう)

信州蓼科の「無藝荘」で小津監督と野田高梧が書き上げた作品。
主演の笠智衆の娘役が若き岩下志麻(たぶん20歳)で初々しくキレイ。
杉村春子、東野英治郎、という新劇系の実力脇役陣の演技が素晴らしいし、
イケメン佐田啓二(中井貴一の父)、その若き妻役に岡田茉莉子(たぶん28歳)
・・・小津調のきちっとした演出の中で岡田茉莉子が全く自由な雰囲気でカワイイし柔らかい演技が見もの。

バーでのシーン
https://www.youtube.com/watch?v=YKvx2Ip2Qvk

衣装に触れたサイトもあって興味深い
http://cineyoso.movie.coocan.jp/sanmanoaji.htm
カテゴリー: 映画音楽
(2020年08月27日)
投稿者:suoyon
太陽の子


終戦記念日の8月15日NHKでオンエアされた
ドラマ『太陽の子』(作演出:黒崎博)は
戦時中、原子爆弾の開発を研究する京都大学の
若き研究者の苦悩、戦争に翻弄される人達を描いた話。
日本も原爆作ろうとしてたんだ。
ただ現実的にはウラニウム等の調達が不可能になりできなかったらしい。
それで良かったです。
そのことはさておきドラマの音楽がニコ・ミューリーだったので留守録して観た。

ミューリーはケイト・ウィンスレット主演の『愛を読むひと』で
素晴らしい音楽を書いてる現代音楽シーン注目のコンポーザー。

『太陽の子』では80分の劇中に19の音楽を作曲、
ほとんどが短い曲だがどれも凄く丁寧でレベル高いサウンドを構築している。

映画音楽ドラマ音楽というと一般の方々には結局は親しみやすいメロディ、
情緒的でキャッチーなテーマメロ、っていうことになるが、
そしてそれを否定はしないが音楽の楽しみ方としては残念ながら非常に狭い。
やっぱ売れ線のメロディなのね、
っていうのが音楽の価値観を画一的にしてしまうのがつまらない。
メロディ、メロディだけじゃない楽しさ、ちょっと知的な音の秘密、
みたいなところにも興味示していただくと広がるが、難しい。

ニコ・ミューリーの音楽はそれを完璧に表現、
つまりキャッチーで情緒的なメロディとか一切ないサウンドでつけていて、
でいて昔の世代の現代音楽の無調の観念的な感じ、
アタマで考えただけのリアリティなき音楽でもない柔らかさがある。
これは新しい世代のコンポーザーであり、
クラシカルでも昔のクラシックの下品なベタで臭い付け方もなく、
音楽による知的な価値観を柔らかく新たに表現できる人かもしれない。
エンタメ的というよりアートな方向・・・でもエンタメっていつも
その前に超マイナーだったりアヴァンギャルド、アートだったりしたものが
エンタメに取り込まれるし、王道とかクラシックだけではエンタメは
足りないんです、多分・・・それがひとつの進化かもしれない。

内容は
シーンのセリフの中からいつのまにか音楽入ってくるタイプは多い。
オーソドックスなセリフ受けの音楽スタートでは、
國村隼扮する科学者のセリフ「世界を変えたい」を受けての音楽。
柳楽優弥扮する若き研究者のセリフ「いっぱい未来の話しよう」を受けての音楽。
「次に(原爆)落とされるのは京都という噂があるんや」の辺りからの音楽
などがあった。
また「硝酸ウランや」後のチェレスタでの神秘的なムードはとても好き。
楽器は大編成ではなくピアノ、バイオリン、チェロ、グロッケン、
チェレスタ、パーカッション、シンセ、等と思われる。(多少違うかも、すみません)

國村隼のセリフに「この戦争に大義があるとは思えない」は重い言葉。
また主人公シュウ(柳楽優弥)の弟役を少し前に自ら命を断った三浦春馬が演じ、
劇中で海に入っていくシーンがあり、その後出征し死んでしまうので、ショッキングではある。

『太陽の子』は来年劇場映画版になるらしい。
カテゴリー: 映画音楽
(2020年06月03日)
投稿者:suoyon
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ドラマーJimmy Cobbが91歳で亡くなったとのこと。
なんと言ってもJAZZの歴史的名盤Miles Davis『KIND OF BLUE』(1959)に
参加ということが大きい。
マイルス・バンドではフィリー・ジョー・ジョーンズの後釜がジミー・コブでこの後に神童と言われたトニー・ウィリアムズが控えている。

『KIND OF BLUE』は高校の頃初めて聴いた。
「So What」というモード手法の
礎となった名曲、「Blue In Green」「Flamenco Sketches」の静かなムードが独特で好き。
このハーモンwithout stemミュートの音色はどうしてもマイルスの音色が焼き付いちゃってます。またマイルスはテクニカル派じゃないから歌心ある即興演奏が上手いのです。
チャーリー・パーカーがバップっていう概念を作り出し、ここからがホンマモンのJAZZなんでしょう。(スウィング・ジャズはスウィング・ジャズで硬く言えばジャズの外)しかしバップ、ビバップでコード進行が複雑に高度になりすぎ、インプロヴィゼーションが行き詰まった。
そこでオーネット・コールマンなんちゅう人がフリージャズなることを始めた。
もうひとつの流れはこのマイルス、コルトレーンなんかが推し進めたモードのジャズということになる。

『KIND OF BLUE』では歌モノ・スタンダード曲のジャズ化はしていなくてドリアンモードの「So What」以外はブルース形式の応用が多い。
モードは1960年代に大きく発達した。そこにはマイルス、コルトレーンはじめウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、チック・コリア、マッコイ・タイナー、フレディ・ハバード、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズ等、当時新主流派と呼ばれたミュージシャンの功績が大きい。以外にもモードの礎「So What」でピアノ弾いてるビル・エヴァンスはその後自分のトリオではあまりモード・ジャズはやっていない。
モード手法の演奏概念は難しくプロでも相当レベルでないと無理かもしれない。
ロックの1発コードモノとも異なる。
アート・ブレイキーのバンドが1960年頃に来日したときに、そのバンドにいた若きサックス奏者ウェイン・ショーターが日本のジャズミュージシャンにモード手法を手ほどきしたというエピソードがある。
コード進行で敷かれた
レールを走るのと異なり、モードでは自分でレール敷きつつ走る、とでもいうところか、でいてフリーではない、解決感よりも浮遊感、ロマン派でなく印象派、みたいな、大まかな例えですが。
自分の作曲でもこのモーダルな世界を一応追求しているっちゅうわけです、ジャズのインプロ系とはまた少し異なりますが。
ジミー・コブはコルトレーンの『Giant Steps』(『KIND OF BLUE』と1959年の同時期にレコーディング)の「Naima」というこれまた名曲、にも参加してますね。
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(2020年05月27日)
投稿者:suoyon
ファントムスレッド_
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FBより・・・・映画を取り上げる!(Film Challenge)006



『PHANTOM THREAD』(2017年)

監督:ポール・トーマス・アンダーソン
音楽:ジョニー・グリーンウッド(レディオヘッドのギタリスト)
出演:ダニエル・デイ・ルイス  ヴィッキー・クリープス

イギリスのオルタナ系バンドのレディオヘッドのギタリスト、
ジョニー・グリーンウッドが音楽担当していて注目。
レディオヘッドについて詳しいわけではないが、この映画音楽には
ロック的なギターとか全く出てこない。
美しいピアノのロマンティックなテーマはお洒落だし、
エレクトロニカなノイズ風アプローチは、今の人っていう感じもあるし、
すべてではないけどオケなんかで臭くベタにいかないアプローチということで興味深い。

主演のダニエル・デイ・ルイスはこの作品で引退を表明している。
舞台が1950年代ロンドン、オートクチュールのデザイナーということで
ロマンスグレイなかっこいいオジサン役がまたこれ以上ないってほどバッチリ。
そのルイスが仕事に疲れロンドン郊外の別荘に行く途中のカフェで働く
若き女性と恋をする、という、なんだ!オシャレなラヴロマンスね、と思いきや
これがそんなそんな単純な展開ではなかった。

冒頭の制作会社のロゴマーク辺りからノイズ音楽で導入し、
インタビューに応えるかの如きカットでの若き女性が「彼は私の夢を叶えてくれた・・・」
のあとロマンティックなピアノ曲テーマになる。観てる人は
まずこのロマンティックな音楽に魅せられ映像の展開に集中していくだろう。
しかし、じゃ冒頭の発信音のようなノイズはなんだったの、決してハッピーではない
その音楽・・・・・これが多分映画っちゅうもんですわね皆さん!

映画って90分でも120分でも、この中に無駄なことをやってるわけない、
って考えるとあの冒頭のノイズね、71分辺りにその伏線回収ともいうべき繋がりがあります。
こういうオトナな映画はそういう細かいひとつひとつのアイテムに要注意!ってことだし、
それがまた観終わった後当分噛み締めても味が残るような豊かさに繋がるんでしょうね。
勿論誰にでもわかる楽しき映画も大事です。両方あるのが健全です。
辛いのはヘンに説教臭くてナミダ系の下品な映画ね、ダメです。感性の範疇ですが。

ダニエルが扮する主人公レイノルズが体調崩し、母の幻影が来るシーンでは弦楽での曲調。
高い音域での長い音符に中域でのスタカートのパッセージが長く続く。
2人の結婚というシーンではピアノ曲だがありきたりではなく、凄い高度なことやってるわけでもなく、
まあアンビエントに入るのでしょうか、でも良いです。
つまり心情にベタに合わせないタイプの音楽でしょうか。

2人の愛の話ですが普通じゃないです。キノコとか出てきて。
若き女性役のヴィッキー・クリープスが凄い美人じゃないけどナイーブでとてもいい感じ。
車を飛ばして郊外に行くときのイギリスの田舎町の感じ、自然もいいです。
ただ最近の映画では『マイブックショップ』(2017)のイギリスの田舎の港町が最高です。

音楽はジョニー・グリーンウッドのオリジナルスコア以外にジャズ・スタンダードの
「My Foolish Heart」使用とか、ベルギーの王妃のシーンなどでドクラシック使ってたり、
レストランから帰路の車シーンではなんとドビュッシーの弦楽四重奏曲が出てきてびっくり。
車の走りには合ってました。
このドビュッシー弦四は一般には知られてないからいいかな、めちゃ好きな音楽だし。
それより普通のド・クラシック(この「ド」はド・エム、ドアホウのドです)は
使わないで欲しいかな。ジョニーさんのオリジナルで。

まあでも映像制作側は〔ありモノ〕でおさえておきたいんですよね、
映像だけでの表現では難しい時にこれ使えばそのムードが出るっていう、音楽が持ってるキャラクターね。
ですので作曲家がオリジナル書く前に、ここはこれ使う、っていうことよくあります。

すべて作曲家が書けばいいんだけど、映像側にしてみればオリジナル音楽って読めないっていう不安要素ね、
あるんでしょうね。しょうがないです。映像撮影側のスタッフと異なり、音楽はむずかしいスタッフと言えます。
勿論この場合、ジョニーさんにドクラシック書かせても意味ないしね、選曲でいいと言えばいいことになります。
あと、最後にマイナーなはっきりした曲が、ちょっと違和感あり。
この曲だとちょっと前のクラシックの人みたいなセンスでつまらない。

「ファントム・スレッド」とは、幻の糸を意味し、ヴィクトリア朝時代にあまりに長時間の労働を強いられたため、
仕事が終わっても見えない糸を縫い続けたということに由来、とのことです。

格闘技K-1のアーネスト・ホーストはスリータイムスチャンピオンと豪語したけど、
このダニエル・デイ・ルイスはアカデミー賞主演男優賞3度獲ってますね。そんな人
今現在いない、確か。監督のアンダーソンも世界3大映画祭制覇してる神がかりコンビ。
この作品では数々のノミネートや受賞していて衣装デザインがアカデミー賞です。
このポール・トーマス・アンダーソン監督とダニエル・デイ・ルイス、ジョニー・グリーンウッドは
『ゼア・ウィル・ビー。ブラッド』(2007)でも組んでいる。
カテゴリー: 映画音楽
(2020年05月26日)
投稿者:suoyon
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映画を取り上げる!(FILM CHALLENGE)005

(FBに掲載したものです)


今回の映画紹介は・・・・・

『VERTIGO』(めまい) 1958年

監督:アルフレッド・ヒッチコック 
原作:ポワロ・ナルスジャック(・・・フランスの小説らしい)
音楽:バーナード・ハーマン 
タイトルデザイン:ソール・バス

映画音楽といえばバーナード・ハーマンに触れないと、っちゅうところだし、
ヒッチコック監督のスリス&サスペンス心理的スリラー大好き。

1958年〜60年のヒッチコック作品はタイトルデザインが
グラフィックデザイナーのソール・バス(Saul Bass)で
これが当時のスタイリッシュというかドライでカッコいい。
名作『サイコ』『北北西に進路を取れ』もソール・バスのデザイン。

『VERTIGO』ではイントロのアヴァンロールのソール・バスのデザインに
バーナード・ハーマンの音楽が見事としか言いようが無いほど、これだけで
ひとつの作品としての完成度を感じる。
ここでの音楽は有名なEflat-mjaor-minor7th,6thの独特の怪しい和声の
上行・下行からなるフレーズがこの冒頭、劇中、エンディングに出てくる。

物語はジェームス・スチュワートの悪夢から始まって、
めちゃ色っぽいブロンド女性のキム・ノヴァクらが仕掛けた殺人事件に
巻き込まれていく展開が飽きさせない。

ヒッチコック映画ではヒロインは必ずブロンド美人で『サイコ』では
そのブロンドが浴室でシャワーを浴びてるところめった刺しの殺人にあうという
ショッキングな内容。
このシーンはヌードモデルの吹き替え使い撮影に7日間を費やしたらしい。
ヌードなどありえない時代、大事な部分が見えないアングル等苦労してる。

『VERTIGO』ではジェームス・スチュワートの役が高所恐怖症なので塔の螺旋階段を
上り恐怖にかられるシーンに「ドリーズーム」
(後にこの作品名から「vertigo」と名付けられたカメラ手法)でのカメラワークが用いられている。
これは僕なんかより映像系の方の解説をお願いしたいが、
カメラをズームバックしつつ移動のレールのカメラを前進させ、
被写体のサイズは変わらないのに背景との関係が変化を生じ広角になる、
というもので、スピルバーグも『E.T.』で使用。

しかし『VERTIGO』では塔の螺旋階段の模型を作り、横にして移動レールを敷いて
この撮影を完成させた。それでどうやったかが納得した。
塔の螺旋階段だと空間なので移動撮影のレールは?という疑問があったからだ。

自分のことで恐縮ですが、
僕が音楽担当した『美味しんぼ(1)』(唐沢寿明、石田ゆり子主演)
『奇跡の人』(山崎まさよし、松下由樹主演)でもこのヴァーティゴ手法があり、

『奇跡の人』では、
並木道シーンでセリフが終わりカット代わり、
ヴァーティゴ手法で松下さんのアップ、その後カット代わり夜の室内、
という流れの中でヴァーティゴのカットから音楽を入れた。

これはセリフを受けての劇伴スタートで他の音との混在が防げ、
またヴァーティゴ手法ということで映像がなんらかのアクションしているので
音楽を入れることでの違和感を緩和できる。
本来次のカットのためのサスペンス音楽なのだが、
カット変わりにジャストだと<いかにも>、
っていう感じになるのでその数秒前のヴァーティゴカットで入れると自然だった、
ということだった。

またこの『VERTIGO』では被写体の周りを回りながら撮る撮影法もあり、
ブライアン・デ・パルマ『ボディダブル』なんかに使用されてるし、
アニメーションも取り入れ主人公の悪夢シーンを、
さすがにこれは今見ると時代を感じるが
ヒッチコックは先駆的な事をいろいろやってたのかな、と思う。

冒頭の悪夢シーンのあと現実に戻ると事務所の窓にかかっているのは
ブラインドではなくてアジア風なすだれ、よしず風な感じや、
その事務所の女性がキャンバスに描いているのは、な!なんと
新しいブラジャーのデザイン画・・・1958年のアメリカ、先進国ですね、おしゃれ。
そういえば1960年代に観てたアメリカのテレビドラマ『奥さまは魔女』の
ママはサマンサで子供がタバサ、旦那さんは広告代理会社に勤務ですもんね。
広告会社のビジネスマンが主役級なんて日本では数十年後ですね、早いです。

話が飛び飛びでスミマセン、
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの作品なっちゃう!

『VERTIGO』ではセリフ無いシーンに音楽がこのムードをフォローしている。
音楽のバーナード・ハーマンとはいいコンビだったが
1966年の『引き裂かれたカーテン』で殺戮シーンの音楽を巡って
ヒッチコック監督と対立して作曲してたのに降りてしまう。
BBCのドキュメンタリーでそのボツ音楽をシーンにあてたのはメチャクチャ
興味深い、超面白いものでした。

マーティン・スコセッシ監督は『タクシー・ドライバー』でハーマンを起用し成功した上に、
ハーマン死後の1991年の作品『ケープ・フィアー』でハーマンのボツに
なったヒッチコック作品の音楽をエルマー・バーンスタインの編曲で甦えさせている。

デザイナー、ソール・バスは日本でも売れっ子になりいろんな企業のロゴのデザイン
書いてるとのこと。
いやいやヒッチコックきりないワ・・・どの作品も面白いです!
カテゴリー: 映画音楽
(2020年05月11日)
投稿者:suoyon
スリービルボード



Composer#Michiaki Katoさんからバトン受けた、Film Challenge Batton。
自分流にアレンジ(いい加減に)やらせてもらっちゃいます。

001
映画『スリービルボード』(原題:Three Billboards Outside Edding,Missouri)
2017年アメリカ
監督:マーティン・マクドナー 音楽:カーター・バーウェル
出演:フランシス・マクドーマンド ウディ・ハレルソン

レイプされ殺された娘の捜査が納得行かず警察に抗議をするばかりか、
町外れに3つの抗議の大看板(ビルボード)を自費で立てた主人公ミルドレッド。
人種差別主義者の白人警察官と主人公は真っ向から対立するが、いつしか
その関係性に変化が生じる。
主人公が頑張って、レイプ殺人の犯人を探し出すプチ感動モノの展開なんかを想像してたら、
これが全然違って、なるほど!と。情緒的にウェットな日本人の好きな
下品なお涙モノではなくドライな気持ちいい展開だった。
別の見方すると肉食的な人々ではあるけど*。

「庭の千草」というアイルランド民謡が冒頭と大事なシーンに使用されている。
アクティブでサスペンスなシーンへの音楽がベタに合わせない曲で、この
物語の方向性をしっかりブレないものにしている。
「庭の千草」は1930年代にそういう映画もあったし、
1944年のイングリッド・バーグマン主演の『ガス燈』の冒頭でも使用されている。
そういえば昔CMで僕もこの曲を編曲しました。

とにかく『スリービルボード』は
展開が飽きさせない秀逸な演出。主演のおばさんフランシス・マクドーマンドらの
実力派の演技が問題を抱え悩む人達が家族と別のところで繋がっていくところが素晴らしい。
マクドーマンドはコーエン監督の『Fargo』(1996)でも主演でいい味出してたし、
アカデミー賞エミー賞トニー賞という映画舞台テレビの3大賞をすべて獲ってるすごい女優。
『あの頃ペニーレインと』『North Country』では助演で出てた。

この貧しいミズーリ州の田舎町、これらはラストベルト(Rust Belt)とか言って
錆びついて見捨てられた白人たち・・・こういうこの人種差別主義者の白人警察官が
トランプ支持しちゃうんだろうな、みたいな想像しちゃった。
ただそういう政治的社会的対立が主題ではなく、パースナルなところに帰結している。
政治的な善悪をやっちゃうと説教になっちゃう恐れありだけど、一切説教には
なってない。これ凄いコンセプトの強さが感じられます。
カテゴリー: 映画音楽
(2020年03月18日)
投稿者:suoyon
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「映画音楽カミクダキ」開催します。
4月19日(日)16:30~19:00 場所:ガレリアカフェユウ(茗荷谷)
https://z-m-www.facebook.com/events/200456988005546/

レギュラー的に行ってる「カミクダキ」やります! 周防義和&Jirafa
日本アカデミー賞優秀音楽賞ご報告も兼ねて、周防義和が音楽担当した映画等からの音楽解説、
その他、皆さんにもクイズを投げかけ、どんな音楽が映像に合うかとか音遊びもしたいです。

映画音楽というと一般的にはメロディアスなテーマ曲になっちゃいますが、
そういうミーハーな名曲集じゃなくてもうちょい深掘りした映像と音楽の関係を、、、
なんで,この音楽がこの映像に合うの?みたいなことを追求します。
ちょい知的、でも楽しく行きたいです。
感染ウィルスねえ、ちょっとでも改善してると嬉しきことです。
この会は20人限定の小さな集いです。
前もってガレリアカフェユウか私に予約入れて下さい!
ガレットの美味しいお店で、日曜の夕方です!
(注:ガレリアカフェユウは昨年6月に移転してます・・同じ茗荷谷駅周辺の別場所です)
カテゴリー: 映画音楽
(2020年01月15日)
投稿者:suoyon
この度映画「カツベン!」音楽において日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞の連絡を受けました!
いやいや毎年数百の映画が公開される中で5人の優秀賞に選ばれ嬉しきことです。
(「舞妓はレディ」で最優秀獲ったときは年間700本弱が公開されてた)
「カツベン!」見たよ、面白かった、とか皆さんにも励まされました!
また自分で実質的に音楽プロデュースも果たし、自分のオリジナル音楽以外の部分、劇中の蓄音機から流れるクラシック曲、とか前半劇中劇の下座音楽の音楽制作も主導したので、ある意味今までで一番多くの作業した大仕事でした。多くの方々の協力で完成した映画音楽と言えます。ありがとうございました!
最優秀発表は3月6日・・・これは欲出さないです・・・決勝に行けるだけでありがたきです!
カテゴリー: 映画音楽
(2019年11月29日)
投稿者:suoyon
月2度発売する映画雑誌「キネマ旬報」の12月上旬号の賀来タクトさんのコラム「映画音楽を聴かない日なんてない」はワタシが特集されてるんです。
映画「カツベン!」のサントラの裏話しといったところを喋ってます。
大正時代という設定の物語で活動弁士が映画の説明するシーンでは当時の雰囲気を再現するために三味線、クラリネット&フルート、お囃子(打楽器)という編成で作曲。
日本の陰旋法、ペンタトニック、西洋的な短調が混じった曲をJirafaと10数曲作曲した。しかし物語に登場する靑木館という劇場が経営状態が悪く3人の楽士しかしないし、レパートリーも数曲しか演奏できない、と言う設定を与えられ、、え~っ!!大変でした。
その上、和音出る楽器がないし・・・三味線の和音は4度5度で3度の和音はあまり三味線では相応しくないのでいわゆる西洋的なコードは無理、ということでした。
また続きは・・・
カテゴリー: 映画音楽
(2019年11月03日)
投稿者:suoyon
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テレビドラマ「岸辺のアルバム」から42年。主演のひとり、女優の八千草薫さんが亡くなった。他にはない気品のある美しき女優さんだ。
とにかくこのドラマは僕にとってすごくすごく思い出深い。ご冥福を祈りたい。

その時の八千草薫さんは40代で杉浦直樹さんと夫婦役だった。他のキャストもそうそうたるメンバーだ。
1977年に僕が音楽業界に入った時に、その事務所の作曲家小川よしあきさんのレコーディングにアシスタントで参加したが、
その時小川よしあきさんが「岸辺のアルバム」の音楽、劇伴奏音楽を作曲していた。

今では考えられないが毎週赤坂のTBSに打ち合わせに行き、毎週早稲田にある早稲田アヴァコスタジオで
レコーディングしていた。それもすべて生楽器。勿論デモなどの提出はない時代。
主題曲がジャニス・イアン「Will You Dance?」でこれはハバネラのリズムの素晴らしい曲。
歌もめちゃいい。

劇伴も演出の鴨下信一さんはある時からこの「Will You Dance?」のインストアレンジだけを要求するようになり、
1曲のバリエーション中心に劇伴奏音楽が成立してのを目の当たりにした。
多摩川狛江付近が台風で氾濫して主人公の一家の家が水没し川の濁流に流されてしまう話だが、その前に平和で幸福と
思われていたこの一家の家族は実は家族皆が勝手なことをして(企業の犯罪に関わる父、不倫する母、レイプされる娘等)すでに
精神的にはバラバラな家族だった。それが物理的な家自体のバラバラを経験してそのあとに何が残ったか・・・みたいな凄いドラマだった。

山田太一脚本のこのドラマは当初14%くらいでスタートしたが最終回は20%、テレビ史に残る名作になった。
実際にその数年前にあった多摩川の氾濫を基にに書いた話で、今年その多摩川がまさかまた大災害を生むとは思わなかった。

ちなみに1977年に「Will You Dance?」のアレンジレコーディングに立ち会った僕は18年後、同じ早稲田アヴァコスタジオで
「Shall We Dance?」を自らのアレンジしてレコーディングした。
「Will You Dance?」のハバネラリズムは影響受け、映画「シコふんじゃった。」の劇伴「コクトオ桃色」でハバネラ風を取り入れた。
写真はうちのハウチワカエデの紅葉です。(11月2日撮る)
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