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映画を取り上げる!(FILM CHALLENGE)005

(FBに掲載したものです)


今回の映画紹介は・・・・・

『VERTIGO』(めまい) 1958年

監督:アルフレッド・ヒッチコック 
原作:ポワロ・ナルスジャック(・・・フランスの小説らしい)
音楽:バーナード・ハーマン 
タイトルデザイン:ソール・バス

映画音楽といえばバーナード・ハーマンに触れないと、っちゅうところだし、
ヒッチコック監督のスリス&サスペンス心理的スリラー大好き。

1958年〜60年のヒッチコック作品はタイトルデザインが
グラフィックデザイナーのソール・バス(Saul Bass)で
これが当時のスタイリッシュというかドライでカッコいい。
名作『サイコ』『北北西に進路を取れ』もソール・バスのデザイン。

『VERTIGO』ではイントロのアヴァンロールのソール・バスのデザインに
バーナード・ハーマンの音楽が見事としか言いようが無いほど、これだけで
ひとつの作品としての完成度を感じる。
ここでの音楽は有名なEflat-mjaor-minor7th,6thの独特の怪しい和声の
上行・下行からなるフレーズがこの冒頭、劇中、エンディングに出てくる。

物語はジェームス・スチュワートの悪夢から始まって、
めちゃ色っぽいブロンド女性のキム・ノヴァクらが仕掛けた殺人事件に
巻き込まれていく展開が飽きさせない。

ヒッチコック映画ではヒロインは必ずブロンド美人で『サイコ』では
そのブロンドが浴室でシャワーを浴びてるところめった刺しの殺人にあうという
ショッキングな内容。
このシーンはヌードモデルの吹き替え使い撮影に7日間を費やしたらしい。
ヌードなどありえない時代、大事な部分が見えないアングル等苦労してる。

『VERTIGO』ではジェームス・スチュワートの役が高所恐怖症なので塔の螺旋階段を
上り恐怖にかられるシーンに「ドリーズーム」
(後にこの作品名から「vertigo」と名付けられたカメラ手法)でのカメラワークが用いられている。
これは僕なんかより映像系の方の解説をお願いしたいが、
カメラをズームバックしつつ移動のレールのカメラを前進させ、
被写体のサイズは変わらないのに背景との関係が変化を生じ広角になる、
というもので、スピルバーグも『E.T.』で使用。

しかし『VERTIGO』では塔の螺旋階段の模型を作り、横にして移動レールを敷いて
この撮影を完成させた。それでどうやったかが納得した。
塔の螺旋階段だと空間なので移動撮影のレールは?という疑問があったからだ。

自分のことで恐縮ですが、
僕が音楽担当した『美味しんぼ(1)』(唐沢寿明、石田ゆり子主演)
『奇跡の人』(山崎まさよし、松下由樹主演)でもこのヴァーティゴ手法があり、

『奇跡の人』では、
並木道シーンでセリフが終わりカット代わり、
ヴァーティゴ手法で松下さんのアップ、その後カット代わり夜の室内、
という流れの中でヴァーティゴのカットから音楽を入れた。

これはセリフを受けての劇伴スタートで他の音との混在が防げ、
またヴァーティゴ手法ということで映像がなんらかのアクションしているので
音楽を入れることでの違和感を緩和できる。
本来次のカットのためのサスペンス音楽なのだが、
カット変わりにジャストだと<いかにも>、
っていう感じになるのでその数秒前のヴァーティゴカットで入れると自然だった、
ということだった。

またこの『VERTIGO』では被写体の周りを回りながら撮る撮影法もあり、
ブライアン・デ・パルマ『ボディダブル』なんかに使用されてるし、
アニメーションも取り入れ主人公の悪夢シーンを、
さすがにこれは今見ると時代を感じるが
ヒッチコックは先駆的な事をいろいろやってたのかな、と思う。

冒頭の悪夢シーンのあと現実に戻ると事務所の窓にかかっているのは
ブラインドではなくてアジア風なすだれ、よしず風な感じや、
その事務所の女性がキャンバスに描いているのは、な!なんと
新しいブラジャーのデザイン画・・・1958年のアメリカ、先進国ですね、おしゃれ。
そういえば1960年代に観てたアメリカのテレビドラマ『奥さまは魔女』の
ママはサマンサで子供がタバサ、旦那さんは広告代理会社に勤務ですもんね。
広告会社のビジネスマンが主役級なんて日本では数十年後ですね、早いです。

話が飛び飛びでスミマセン、
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの作品なっちゃう!

『VERTIGO』ではセリフ無いシーンに音楽がこのムードをフォローしている。
音楽のバーナード・ハーマンとはいいコンビだったが
1966年の『引き裂かれたカーテン』で殺戮シーンの音楽を巡って
ヒッチコック監督と対立して作曲してたのに降りてしまう。
BBCのドキュメンタリーでそのボツ音楽をシーンにあてたのはメチャクチャ
興味深い、超面白いものでした。

マーティン・スコセッシ監督は『タクシー・ドライバー』でハーマンを起用し成功した上に、
ハーマン死後の1991年の作品『ケープ・フィアー』でハーマンのボツに
なったヒッチコック作品の音楽をエルマー・バーンスタインの編曲で甦えさせている。

デザイナー、ソール・バスは日本でも売れっ子になりいろんな企業のロゴのデザイン
書いてるとのこと。
いやいやヒッチコックきりないワ・・・どの作品も面白いです!