湯川さんに続いてついにジャーナリスト後藤さんが殺害されてしまった。イスラム国と呼ばれるテロ集団の酷い殺戮はいかなる言葉を持ってしても正当化できるものではない。後藤健二さんはイスラム国になんら害を与えたわけではなく日本人ということで殺害されたのは悲劇というしかない。

 

しかし日本政府の行動、事件への対応が必ずしも正しいものとは思えない。昨年8月に湯川さん、10月に後藤さんが同地域で行方不明になっていることを政府は承知している事実がある。安倍首相はイスラム国周辺の中東諸国への2億ドルの資金提供は人道支援と言ったが、カイロでの演説では「ISILと闘う周辺各国に対する支援」とはっきり述べている。つまりアメリカ、イギリスなどに呼応する国としての責任を明確にしているが、事件後は「人道支援」と言葉を変えた。嘘をついている、全くいい加減な首相と言える。一国の首相としてカイロでの時点であの人は言葉を選ぶべきだった。

カイロなど中東地域への歴訪は日本企業のトップを引き連れての経済外交の面が多々あったとも聞く。かねてからあの首相はトルコにも原発輸出外交を展開している。

 

TBS国会担当記者の武田一顕氏も「政府のアメリカ様に媚び売った態度が・・」と2日夜の「荻上チキセッション22」で何度も「アメリカ様」発言をし、政府のテイタラクを述べている。また安倍首相は「邦人救出に自衛隊の行動も考えなければ」となっているが、それこそ憲法違反である自衛隊の海外での武力行使、集団的自衛権行使容認はいっそうの海外にいる日本人、海外の日本企業を脅威にさらすことにもならないだろうか。元内閣官房副長官補の柳沢協二氏はそう述べている。

 元外務省国際情報局局長の孫崎享氏も「軽々にイスラム社会への武力行使に繋がる行動をすべきではない」「フランスでも風刺週刊誌テロが起きイスラム社会と西側諸国の対立がここ数年で最も緊迫した時期に、このような発言をすれば何らかの危険が起こりうると考えるべき」と述べている。

政府寄りの立場をとる向きからは「やるべきことはやったのでこれで良かった」「日本とヨルダンの協力でいい関係が築けた」「アメリカにも評価された」などが聞かれるがそれは違うと思う。湯川さん後藤さんの死をあまりにも軽んじているとしか思えない。

 戦地での弱者への取材で素晴らしいジャーナリストとしての活動で我々に様々な事実を伝えた後藤健二さんに謹んで哀悼の意を捧げます。